第15章 オバケの森
島の大半を占める、深い森。
通称“オバケの森”
キキキ…
ケケケ…
笑い声とも思える不気味な音が聞こえる。
ジメジメしているはずなのに、森の中はひんやり肌寒い。
「…モモ、歩きづれェよ。」
モモはローの背中にビッタリとくっつき、ズルズルと引きずられるように歩く。
「…もっとゆっくり歩いて…。」
「日が暮れちまうだろうが。」
だから無理して来なければ良かったのに。
「…引き返すか?」
ローの提案に、ブンブンと大きく首を振る。
その動きに肩に乗ってたヒスイがボテッと落ちる。
「あ、ごめん。ヒスイ。」
ヒスイは見るもの全てが珍しいのか、興味津々に辺りを動き回った。
「ヒスイに負けてんじゃねェか。いつかの洞窟とはえらい違うな。」
あの時はこんなふうに、うろちょろと動き回るモモに手を焼いたものだ。
「そんなに怖いなら、抱えてやるから…ホラ。」
たぶんそっちの方が早い。
手をさしのべると、モモはイヤイヤと拒否する。
「こ、怖がってなんか…ないわ。」
どの口が言うのかと睨んでやると、負けず嫌いに火がついたのか、モモはローから手を離して、ひとりで歩いてみせた。
「ほら、全然大丈夫--」
ガサリ
モモの足下の茂みから、シュルリと三つ首のトカゲが飛び出した。
「にゃーー!!」
ネコかッ、と突っ込みたくなる悲鳴を上げて飛び上がる。
ゴン。
仰け反った拍子に、背後の木に後頭部をしたたか打ちつけた。
するとその木からバサリと音を立てて、1メートルはありそうな巨大一つ目コウモリが顔を出す。
ギョロリとした目と、バッチリ目が合った。
「ぎにゃーー!」
今度は逃げようとして、木の根っこに躓き、盛大にコケた。
「きゅきゅー!?」
勝手にボロボロになっていく主人に、ヒスイが慌てふためいた。
ああ、これは…。
無理やりにでも止めて、連れてくるべきじゃなかったな。
目を離したら、勝手に死ぬ。
ローがそう悟った瞬間だった。