第15章 オバケの森
さっきまで快晴だったのに、島に近づくにつれ、どんよりと厚い雲が空を覆う。
急に湿度も出てきて、なんだかジメジメする。
ヒスイは湿気が嬉しいのか、きゅい!と機嫌よく鳴いた。
「ヒスイはジメジメが好きなんだね~。ボクはなんかちょっと暑い…ってモモ、どうしたの? 震えてるよ?」
「……え?」
ギュッとベポのツナギを握りしめるモモは、小刻みにプルプル震えている。
「くく…ッ、島に入ってはいけない病か?」
「む、武者震え…よ!」
小馬鹿にしたようにローが笑うので、思わず反論する。
「そっかー、モモはそんなに楽しみなんだね。」
「俺も今回は昼寝でもするッス。モモ、楽しんで冒険して来いよ。」
仲間たちから後押しされてしまった。
「う…、うん。」
どうしよう。
島に入ってはいけない病にしとけば良かった…。
「到着~!」
昼間だというのに、夕方のように薄暗い島へついに上陸した。
辺りにはうっすら霧も出ている。
「モモ、準備できたー? 気をつけて行っておいで。」
バラリと梯子を船の外へ投げ、笑顔で見送るベポに、もう引きつった笑いを返すしかない。
「オイ、本当に行くのか? 別に無理しねェでも。」
「……行く。」
死ぬほど怖いけど、無人島にはたくさんの植物が自生してるはずで。
これは以前ローからもらった植物図鑑の知識を活かせるチャンスなのだ。
それに、ローにはバレてしまっているが、オバケが怖いなんて子供っぽいこと、仲間たちには知られたくない。
ただでさえ戦力外な自分の、なけなしのプライドである。
「行こ、ヒスイ。」
肩にヒスイを乗せて、慎重に梯子を降り始める。
(これは、いくら言っても聞かねェな…。)
強情を絵に描いたようなモモの態度に、止めるのを諦めて仕方なく後を追った。
「ロー、ついて来てくれるの?」
ヒスイと2人で行くつもりだったのか、大きく目を見張った。
「当たり前だろ。俺がオマエらだけで行かすと思ってんのか、バカ。」
安心したのか、ホッと笑顔になって、見送る仲間たちに手を振った。
「みんな、行ってくるねー!」