第15章 オバケの森
「おーい、みんなー! 島が見えたよ!」
その日の昼過ぎ、ベポが展望室から島の発見を知らせた。
「お、ほんとだ。って言っても、今回は無人島だっけか。」
残念ながら前回のような娯楽性は期待できない。
恐らく、飲み水や木の実などの簡単な物資補給だけで終わるだろう。
「ああ、でもモモは薬草とか採取できんじゃねぇの?」
「うん。人の手が入っていない島は、思いがけない収穫があるから楽しみ!」
「きゅい!」
ヒスイも初めての島に心踊るのか、高らかに鳴いた。
「…お前、上陸する気でいるのか?」
その様子を見ていたローが、意外そうに聞いた。
「もちろん! どうしてそんなこと聞くの?」
「いや…、てっきり嫌がるかと思ってな。」
嫌がる?
どうして…。
「なんだ、お前、聞いてないのか…。ベポ!」
「アイアイ、キャプテン。」
展望室からベポが機敏にジャンプして降りてくる。
「次の島について、説明してやれ。」
「アイ! 次の島はねー、自然豊かな無人島だよ。ログも1日ちょっとで溜まっちゃうし、ちょっとした休憩みたいなものだね。」
「そうなの。」
それのどこに嫌がる要素があるのだろうか。
「ああ、そうそう。あの島にはおもしろい噂があってね。なんでも、『出る』らしいよ。」
「出る? なにが…?」
「オバケ。」
「……え?」
この世で最も嫌いなワードが聞こえた気がして、つい聞き返してしまう。
「島の深い森には、怨霊やら妖怪やら、そりゃもう、ありとあらゆるホラーなヤツらが出るって噂だよ。通称“オバケの森”って呼ばれてるんだけど、なんかおもしろいよね。」
怨霊やら、妖怪やら。
ありとあらゆるホラーなヤツら…。
ベポの言葉が頭の中を反芻する。
「…モモ?」
「あ…ううん。お、おもしろいね。」
青ざめた顔色のまま、全然おもしろくなさそうに言った。
幸か不幸か、それにベポが気づいた様子はない。
「でしょ? ボク、船番してるから、薬草を探しがてら探検しておいでよ。」
「………うん。」
お願い、ベポ。
そういう情報は、もっと早く言って。
(苦手なら苦手と、言っちまえばいいんだ。)
強情にも隠そうとするモモに、ローはため息を吐いた。