第3章 ハートの海賊団
「…モモ?」
コクリと頷いた。
「もしかしてそれって、キミの名前?」
再び頷き肯定する。
そしてモモはローの手のひらに、さらに書き綴った。
『助けてくれて、ありがとう』
まさか、本当に無事に海軍の船から脱出できると思わなかった。
今こうして生きているのは、ひとえに彼らのおかげだろう。
「お前、しゃべれないのか?」
先程からモモは一言も言葉を口にする様子がない。
ローの問いにモモは頷いた。
「ええ、そうなの!?」
「うっそ、可愛い声が聞きたかったぁ~!」
可哀想に、と言うベポと、欲に塗れたシャチとペンギン。
そろそろ本当に後ろの2人は追い出そうか…。
「まあ、お前が何者だろうとどうでもいい。拾っちまったもんは仕方ねェ。俺は一度診た患者は見捨てねェ主義だ。ベポ、次の島へはどれくらいで着く?」
「うーんと、一週間くらいかなぁ。」
「じゃあ、そこまでこの船に乗せてやる。」
「…!」
なんて優しいのだろう。
感謝の気持ちを込めて深々と頭を下げる。
「……ッ」
ズキリと肩が痛んだ。
「急に動いちゃダメだって!」
ベポが甲斐甲斐しくモモを横にさせる。
「ソイツの言うとおり、あまり動くな。肩と腿の傷は数針縫った。くっつかねえうちに動くと傷口が開くぞ。」
モモは目線だけで返事をすると、おとなしく横になった。
「ベポ、しばらく身の回りの世話をしてやれ。」
「アイアイサー!」
ビシリと頼もしく敬礼をした。
「…シャチ、ペンギン、行くぞ。」
いつまでここに入り浸ってんだ、と睨みつける。
「へーい…。じゃあ、モモちゃん、後でお見舞いにくるからね!」
未練がましくモモに話しかけるシャチの背中をドカリと蹴り飛ばしながら、ローは医務室を出て行った。