第14章 食虫植物
「モモだって、子供じゃねぇんスから。」
そんな四六時中べったり見ていなくても…。
ペンギンがまさにそう言おうとしたとき。
ガシャーン!
なにかが崩れるようなけたたましい音が響いた。
「うわ、なんだ!? …倉庫の方から?」
「チッ…!」
遅かったか…!
ローは飛ぶようにキッチンを出て、倉庫へと走った。
「オイ、モモ! どうした--」
飛び込む勢いで、倉庫の中へと入った。
「!?」
目に入った光景が、咄嗟に理解できない。
ゴロゴロと転がる酒樽。
散乱したネズミ捕り。
そして--。
「ロ、ロー…。」
当のモモはといえば、なぜか宙に浮いている。
いや、浮いているのではない。
よく見れば、モモの身体にはツルが巻き付いていて、それが彼女を支えているのだ。
「これは…、どうなっている?」
「船長! 今の音、大丈夫ッスか? …って、うわ!?」
追いかけて来たペンギンも、倉庫の惨状に目を見張る。
「どうしたの、キャプテーン!」
ペンギンに続き、ベポとシャチもやって来た。
「わわ、なになに? モモ、大丈夫!?」
「うん…。でも降りられなくて。」
いったいこのツルはどこから伸びてきたのか。
「ぶった切るか…。」
ローがスラリと鬼哭を抜く。
「え、ちょっと待って、ロー。…あ、あれ?」
ローの行動に驚いたのか、モモの降りたいという意志に反応したのかはわからないが、ツルはシュルシュルと伸び、モモを床に降ろした。
そして身体に巻き付かせたツルの拘束が緩み、どんどん縮んでいく。
「あ…。」
その時、ツルの先端に赤い葉がついているのを、モモは確かに見た。
「なんだよ、このツル…。気持ち悪ィ。」
蛇のようにウネウネ蠢くツルは、どんどん巻き取られていき、やがて出どころが明らかになってくる。
ちょうど崩れた樽山の向かい側の、棚の裏からだ。
「な、なんかいんのか!?」
「…下がってろ。」
ビビるシャチを横目に、ローがズイと前へ出た。
カチャリ、と鬼哭を構える。
「待って、ロー!」
モモはローの前に飛び出して、それを止めた。