第14章 食虫植物
「キッチンと、デッキ、…あと倉庫にも設置した方がいいッスね。」
「そうね。じゃあ、わたしは倉庫にいくつか置いてくる。」
ペンギンからネズミ捕りを受け取り、それを持ってモモは倉庫へと向かった。
倉庫には酒や保存食など、常温で置いておけるものを大量に保管してある。
他にも大砲の玉や火薬も保管してあるので、ネズミが最も出やすく、最も出ては困る場所だ。
倉庫の中は薄暗い。
備え付けのランプに火を灯した。
「えっと、まずは食料品の近くと、あと棚の隙間にも…。」
ネズミが現れやすいところに設置しようと考えていたけど、なんだかどこもかしこも怪しく思えてくる。
カタリ…。
背後から微かな物音が聞こえた。
「…?」
やっぱりネズミがいるのだ。
彼らのおなかの中に、大事に育てたあの子がいると思うと悔しさが増す。
「棚の上とかも怪しいな。」
ひとつ置いておこうと手を伸ばすけど、残念ながら身長の問題で届かない。
チラリとその横に積み重ねられている酒樽に目をつける。
(あの樽の上に乗れば、届きそうね。)
ネズミ捕りを片手に酒樽の上に乗っかる。
ちょっとグラつくけど、モモの体重くらい簡単に支えてくれそうだ。
(もうひとつ上に…。)
調子にのって、さらに積み重ねられた樽へと乗り上げる。
(これなら…、届きそう--)
ネズミ捕りを置こうと棚の上へ手を伸ばしたとき…。
ズルッ
「あ…ッ」
身体を支えていた腕が滑り、大きくバランスを崩した。
落ちる--!
「きゃあ!」
身体を浮遊感が襲い、訪れるであろう衝撃に備えて身を縮こまらせた。
その時だった。
「きゅいッ」
奇妙な鳴き声と共に、シュルリとなにかがモモの身体に巻きついた。
「オイ、ペンギン。モモはどこへ行った?」
モモの後を追ってキッチンに入ったが、そこに彼女の姿は見当たらない。
「ああ、今、倉庫にネズミ捕りを仕掛けてくれてるッス。」
「…ひとりでか?」
「はい。」
その返答にローは眉をひそめ、舌打ちをする。
「危ねェだろうが。無茶してケガでもしたらどうする。」
出た、船長の過保護…。