第14章 食虫植物
その日の夕食は、ウツボのフルコース。
刺身に唐揚げ、塩焼きに蒲焼き丼。
「どうぞ、召し上がれ。」
「「うおー、旨そう!」」
ボリューム満点の料理に歓声が上がった。
「うまーッ! 自分が釣った魚を美味しく料理してもらえるって幸せ~。モモ、もう結婚してくれー!」
「シャチ、消されてェのか?」
テンションが上がって、つい口から出たシャチの軽口を、ローは決して聞き流さない。
「う、嘘です! 調子のりすぎました!」
この手の冗談は船長には通じないんだった…。
独占欲からくる、チクチクとした敵意を払拭しようと、話題を変えることにする。
「えーっと。あ、そういえばモモが釣ったアジは?」
確か人数分釣り上げていたはずだ。
「あ…うん。それが、逃げられちゃったみたいで。」
「逃げられたァ?」
あんなに頑張って釣っていたのに。
どうりでさっきからしょんぼりしているわけだ。
「でも、キッチンまで持ってきてたじゃん。」
「うん…。それが、料理しようと思ったらバケツにいなくて。」
だから、きっと逃げられてしまったのだ。
「そうかなぁ? おい、ベポ。お前が食ったんじゃねぇの?」
結局、シャチもローと同じ考えに至ったようだ。
「ヒドイな、シャチ! ボクはつまみ食いなんてしないよ!」
犯人扱いされてベポが憤慨する。
「ちゃんと食べたいときは、モモに食べていいか聞くし!」
「まあ、そうだよな…。悪ィ。」
シャチも考えを改めたようだ。
(ごめん、ベポ。わたしもちょっとだけ、疑ってた…。)
「あー、でも俺も今日、酒のツマミに食おうと思ってたチーズがどっかいったんスよね。」
思い出したようにペンギンが言った。
「…ネズミでもいるのかもしれねェな。」
「え、ネズミ?」
ネズミは嫌いだ。
薬草も薬も、なんでもかじってしまうから。
「じゃ、明日ネズミ捕りでも仕掛けるか。」
ネズミにはかわいそうだが、大切な食料をこれ以上食い荒らされては適わない。
「わたしも手伝う。」
「なら、明日までに仕掛けを作っておくッス。」
犯人はネズミだと決めて、この件はひとまず明日に持ち越すことにした。