第14章 食虫植物
「…そうそう、そこでもう一回玉結びをしたら、ゴム管にウキを通して…っと。」
モモはシャチから初心者でもヒットしやすいウキ釣りの仕掛けを教えてもらった。
「…こう?」
「うん、バッチリ。モモは器用だから覚えがいいな!」
細かな作業と集中力はモモの得意とすることだ。
案外、自分は釣りに向いているのかもしれない。
「釣れるかどうかは、わからないけどね。」
「バカだな、モモ。いいか、食いもんってのは、山よりも海の方が断然多いんだぜ? だから俺たちゃ、海にいれば食いもんに困ることはねぇのさ。」
ワイルドな考え方だ。
それはもちろん、海の方が食べ物は多いだろうが、それは捕まえられればの話で。
もしここが山なら、山菜や木の実を集めて、モモは食料補充に貢献できるだろう。
「わたし、海の上じゃ、あんまり役に立たないわね。」
ポロリと落としたモモの呟きに、シャチは目を見張る。
「なに言ってんの? モモがいなかったら、俺たち、釣った魚をどうやって食えばいいんだよ。」
モモがいなかった頃の、あのマズイ食事など、思い出したくもない。
「わかってないんだよな~、モモは。自分がどれだけ俺たちの助けになってるかってことを。」
シャチに言われた言葉に、目からウロコが落ちたようだった。
「モモはいつも自分を過小評価しすぎなんだよ。もっと自信持てって!」
「…うん、…うん!」
なんか、元気出てきた。
物事をマイナスに捉えてしまうのは、モモの悪い癖だ。
「ありがとう、シャチ。よし、大きいお魚釣るぞーッ!」
「その意気だ!」
おーッ! と2人で気合いを入れて、竿を振った。
ぷかぷか…、ぷかぷか…。
チャポン!
「あ…ッ、ウキが沈んだ!」
「よし、巻け巻け!」
ぐんぐん沈んでいくウキを取り戻すように、リールを一生懸命巻いた。
パシャ!
ピチピチ…。
「やった、アジが釣れた。」
やや小ぶりだが、干物にしたら美味しそうだ。
「よし、全員分釣るぞー。」
「頑張れ、モモ。俺はもっと大物を釣り上げてやる。」
いつか、巨大なイカを釣ったときのようなセリフだ。
今度はなにが釣れるのだろう。