第14章 食虫植物
「…そんなところで小っこくなって、なにしてんだ。」
降ってきた声に顔を上げると、いつの間にかローが部屋に戻って来ていた。
「ああ、うん。…おかえりなさい。」
もしや、このお菓子クズはローが?
となると、もしかして先ほどのカップケーキ紛失事件の犯人は…。
「えっと、ローはお菓子って好き?」
「なんだ、急に。」
は…ッ、今の質問はちょっとあからさまだったかも。
「その…、さっきのカップケーキ、無理して食べてくれたのかなぁって。」
「…甘いものは、嫌いじゃない。」
本当はクッキーやチョコレートは食べれるが、ケーキやマドレーヌのようなパンみたいな菓子は好きじゃない。
だけど、モモの作ったカップケーキは、不思議と美味しいと感じたから、嘘にはならないはずだ。
そんなローの微妙な回答を受けて、モモは考えあぐねた。
(好きなんだか、嫌いなんだか、微妙なところね。犯人はローじゃないってことかしら。)
だとすると、この菓子クズは…?
「ロー…。あの…、お菓子食べたくなったら、いつでも言ってね? また作るから。」
「ああ。お前の作る菓子はなかなか気に入った。」
また作れ、とむしろ頼まれた。
(び、微妙…ね。)
結局、答えは出せないまま、カップケーキ紛失事件は迷宮入りしてしまった。
翌日、早速モモは昨日考えた食料補充作戦を実行することにした。
「シャチ、一緒に釣りしない?」
「お、いいね~!」
正しくは、素人の自分と一緒に釣りをしてくれないか、の間違いなのだが、シャチはそれをあっさり了承してくれた。
「良かった。ついでに糸の結び方と、仕掛けの付け方も教えて?」
ローの山積みの本の中には、さすがに釣りの本はないので、ここは先輩に教えを請うしかなかった。
「任せとけ! 手取り足取り教えてやるから!」
「……手だけでお願いします。」
頼られて興奮気味のシャチに、一歩引いてお願いした。