第14章 食虫植物
「風呂ぉ? お前がかよ。珍しい…。」
普段どれだけ入れと言われても、なかなか入らないのがベポである。
そのうち抜け毛やノミで船内が悲惨な状態になり、ローに「いい加減にしろ!」と一喝されるのが、いつものパターンだ。
それが今日は、自ら風呂に入るなんて…。
「珍しいこともあるもんだ。槍でも降るんじゃねぇの?」
おかわりしたハーブティーを口に含みつつ、シャチが言う。
「船長に怒られたんスか?」
そうでないと、このベポがお風呂に入ると思えない。
「ううん。モモと一緒に入った。」
その一言に、一瞬固まり、それから2人して盛大にハーブティーを吹いた。
「「ぶふーッ!」」
「わッ、汚ねぇ! 2人とも、なにしてんのさ。」
ベポは機敏に動き、それを回避した。
「ゲホゲホ…ッ。な、なにしてるはこっちのセリフだよ! どうしたらそんな羨ましい展開になるんだ!」
モモと一緒に風呂に…?
それは当然、裸というわけで。
「どうしたらって、モモがボクの身体を洗ってくれるって言うから。」
身体を、洗ってくれる…!?
((う、羨ましすぎる!!))
「そ、その…、どうだった…!?」
「え。すごく気持ちよかったけど。」
すごく、気持ちよかった!?
「うおぉぉい、ベポ! お、お前、仮にも船長の女に、なにしてんだッ!」
「は?」
当然、シャンプーが気持ちよかったのだが。
餓えた男たちの脳内妄想では、違うナニかが繰り広げられていた。
ガチャリ。
「うるせェぞ、オマエら。なにを騒いでやがる。」
興奮して叫びすぎたせいで、ローが様子を見に来てしまった。
「船長…! いや、その…、ベポが。」
「あ? …なんだ、ベポ。風呂に入ったのか。珍しい…。」
普段はいくら言っても入らないのに。
「アイアイ、モモに入れてもらったよ。」
(うおい、バカ正直に言うなよ…! 船長が怒るだろ!)
クルーである自分たちから見ても、ローは独占欲が強く、嫉妬深い男だと思う。
モモは知らないだろうが、街で他の男がチラリとでもモモを見ると、その男を射殺すかのように睨みつけ、撃退している。