第14章 食虫植物
しかし、このままだと、クマの干物が出来上がってしまいそうだ。
雨乞いの歌なら唄えるかもしれないけど、それだとせっかく干した洗濯物が台無しになってしまう。
「ベポ、さっとでいいからお風呂入っておいでよ。」
「やーだー。お風呂面倒くさい。」
お風呂のなにが面倒くさいのか。
風呂好きのモモには理解しがたい。
「なにがそんなに嫌なの?」
「えー…。身体洗うのとか、全部。」
確かに彼の巨体をひとりで洗うのは、なかなか大変だろう。
「うーん、じゃあ…--」
「…ベポー、オイ、ベポ。…あいつ、どこ行った?」
「どうしたよ、ペンギン。ベポになにか用か?」
首を傾げながらキッチンに入って来たペンギンに、シャチが声を掛けた。
「ああ、今後の航路について話したいんだけど、どこにもいねぇッス。」
ああ見えてベポはこの船の航海士。
航路の相談は彼がいなければ始まらないのだ。
「そういや、さっきから見ないな。モモの姿もないし、2人でなんか遊んでんじゃねぇの?」
「遊ぶって言ったって、釣りもしてなきゃ、部屋にもいなかったよ。」
他に2人がいそうな場所なんて…。
うーん、と2人が悩んでいるキッチンは、ジワジワと蒸し暑い。
「…にしても、今日は暑ちぃッスね。」
「ああ。…そうだ、モモが冷蔵庫に飲むとスーッとするお茶を作ってくれてたな。」
「飲むとスーッとするお茶? なにそれ、興味あるッス。」
要はハーブティーなのだが。
冷蔵庫から冷えたお茶を取り出し、グラスに注ぐと、2人は一気に飲み干した。
「あ、なんか、スーッとする。」
「涼しいッスねぇ。」
鼻から抜ける清涼感は、確かにスーッとする。
その時、ガチャリとキッチンのドアが開き、ドシドシと音を立てて巨大な白クマが中に入って来た。
「はー、サッパリした。あれ、2人ともなに飲んでるの?」
「スーッとするお茶ッス。って、ベポ! お前、今までどこにいたんだよ。探してたのに!」
「お風呂。」
ボクにもちょうだい、と自分にもハーブティーを注ぎながら、あっけらかんと答えた。