第14章 食虫植物
「ふぁ…、今、何時だ?」
「えっと…。」
時刻は早朝。
まだ夢の中にいてもおかしくない時間だ。
「…ごめんなさい。」
「あ?」
朝早くからせっかく眠っていた彼を、無理やり起こしてしまった。
「その…、子守歌、唄うわ!」
今からでも寝直してもらおう。
「バカ、もう起きた。そんなこといちいち気にすんじゃねェよ。」
ポンとモモの額を小突いた。
「うう…。じゃあ、せめて朝ご飯はローの好きなものにするわ。」
せめてものお詫びに…。
「なんだそりゃ、俺の機嫌を取ってるつもりか? ベポじゃあるまいし、そんなんで左右されるかよ。」
「じゃあ、おにぎりとか。」
「……。」
確かにおにぎりは好きだし、モモが作るやつは握り加減も塩加減も絶妙だけど。
「その、焼おにぎりとか。」
「……!」
香ばしく炙った焼おにぎり。
実はモモの作る料理の中で、一番好きだっりする。
醤油味と味噌味の2パターンあるのも魅力的だ。
「味噌汁も作るわ。」
「……ッ。す、好きにしろよ。」
ちなみに味噌汁は2番目に好き。
「うん!」
どうやら、朝ご飯でお詫び作戦は成功のようだ。
今日は雲ひとつない快晴。
風も弱いため、船の速度は上がらない。
せっかくの快晴、無風を活かそうと、モモはデッキで洗濯物を干していた。
パン、と洗濯物をはためかせると、細かな水しぶきと共に石けんの良い香りが漂う。
「ほんと、今日はお洗濯日和だな。」
鼻歌混じりに洗濯物を掛けるモモの足元では、いつものツナギをモモに剥ぎ取られ、真っ裸になった白クマが舌を出して倒れている。
「あっじィ~…。」
「こんなところにいるからでしょう? 船内に入ったら?」
「船内はムシムシするんだよぅ。まだ外の方がマシ…。でも、風がなーい!」
「その毛皮も脱いじゃえば?」
「あ、そうそう。毛皮も脱ごう…って、脱げるかァ!」
起き上がってビシリ、と突っ込むと、そのまま仰向けに倒れる。
「あぁ~…、ダメだぁ。」
「そうとう参ってるのね。そうだ、お風呂に入ってくればいいよ。サッパリして涼しくなるから。」
「やだ、お風呂きらーい。モモ、涼しくなる歌、唄って…。」
「さすがに、それは無理よ…。」