第14章 食虫植物
「ホラ。」
船長室にて渡された本は、グランドラインの様々な植物が記載された植物図鑑。
もちろん、食虫植物も載っている。
「わぁ! こんな本があったのね。」
「あくまで図鑑だ。詳しい育て方が記載されてるわけじゃねェがな。」
それにしても、ずいぶんと年期の入った本だ。
「ところどころ文字が掠れちまってるが、それでも良ければ、好きに読めよ。」
何度も読み返したのだろう、カサカサになったページは黄ばみ、ローが言うように文字が掠れて読めない部分もある。
「ずいぶんと読み込まれた本ね。」
「ああ。それは昔…、コラさんに貰ったもんだ。」
「…そうなの。」
その昔、ローがコラソンと2人、病気を治すために旅をしていた頃。
コラソンはたくさんの医療に関する本をかき集めた。
その中の一冊がこの本だ。
数ある本の中で、この本だけがローの手元に残った。
あとの本はミニオン島の一件で燃えてしまったり、海に沈んでしまったりしたから。
コラソンがローのために残したものは、オペオペの能力と、決して曲げることの出来ぬ意志。
それからこの本だけ。
「そんなに大切な本だったのね。」
「なにを思って図鑑なんて買ったのかわかんねェがな。」
きっといつものドジで、的はずれな本を購入してしまったのだろう。
「でも、すごく貴重な本だと思う。ああ…、すごい。こんなに植物の情報が載っているなんて。いったい誰が書いた本かしら。」
著者はきっと名のある冒険家か学者だろう。
ただでさえ未知とされているグランドラインの植物。
それがこんなに解説されている本は、他にはない。
「それに、印刷された本じゃないわ、これ。どこで手に入れたのかしら。」
個人出版されたと思われる本。
薬剤師である自分が、これほど貴重な教材に巡り会えるとは奇跡みたいだ。
「ロー、この本しばらく貸してもらってもいい?」
「いや…、そんなに気に入ったのなら、お前にやるよ。」
「え…!?」
驚きのあまり、大切な本を取り落としそうになる。
「あ…っと、とッ!」
「なにやってんだよ。お前もたいがいドジだな。」
「ちが…ッ、だって、ローがビックリすること言うから…!」