第14章 食虫植物
「なに言ってるの、ロー。一度育てた植物は、最後まで全身全霊、力を尽くして育てないとダメでしょう。」
それが責任というもの。
やや興奮気味に、まるで拾った子犬のことを話すかのように彼女は言った。
「…そういうもんか?」
「そういうものです!」
やけに力説する彼女に、思わず笑みが零れてしまった。
「まぁ、ひと口に食虫植物って言っても、いろんなタイプがあるからな。直射日光を好むものもあれば、室内で育てた方がいいものもある。」
「え、そうなの?」
日当たり具合は気にしているけど、今まで室内で植物を育てたことはない。
「水も、腰水にしてやるのか、湿った程度に与えてやるのか、種類によって違げェだろ。」
腰水とは器に水を張ってその上に直接鉢を置くという水のやり方。
普通の植物は根腐れを起こしてしまうため、逆に水を捨てなければならないが、熱帯地域などに生息する植物はこの水やり方法が適している。
とはいえ、現状は根どころか芽も出していないので、必要ないことだが。
モモはローが植物の育て方について、意外に詳しいことを知り、少し驚いた。
だって、当初は簡単な薬草ひとつ育てられなかったから。
「ローって、食虫植物のことについて、けっこう詳しいのね。」
「いや、ただ本で読んだだけだ。別に詳しいってほどじゃねェ。」
本!
その手があった。
「え、食虫植物の本があるの?」
山積みの本たちは、てっきり医療に関するものだけだとばかり思っていた。
「食虫植物の本ってわけじゃねェが、それに少し触れたものはあるな。」
「見たい、見せて。」
服の裾を掴まれ、子供みたいな瞳をキラキラさせて頼まれれば、ローにそれを断れる手段はない。