第13章 証
メルディアが以前言っていた。
この島にはとても希少な宝石があるのだと。
質の良い宝石が採れることで有名なこの島は、中でもエメラルドの産地だった。
エメラルドは幸運、幸福を意味する石で、特にこの島のエメラルドはそのご利益が強いと言われている。
しかし、数あるエメラルドの中でも幻のエメラルドがこの島には存在する。
『スター・エメラルド』
純粋なエメラルドでありながら、オパールのような性質を持ち、光の加減によっては金色に輝くことから、その名がついた。
しかし、スター・エメラルドは幻と言われるほど、数が少ない。
10年に一度、見つかれば良い方だという。
しかし、その石を手に入れれば必ず幸せになれると伝えられている。
その話を聞いたとき、ローはなにがなんでも見つけ出してモモに贈ろうと決めた。
それは、モモが宝石をもらったら喜ぶとか、幸運と幸福が訪れて欲しいとか、そんな理由じゃなくて『自分がモモを必ず幸せにする』という決意のようなものだ。
あの日、モモの力を借りて手に入れたスター・エメラルド。
今こうして手元にあるのは、ローの力ではない。
だから、これから必ずローの力で、モモを幸せにすると誓った。
ローが昨日、今日と姿を見せなかったのは、これを用意していたからだ。
感動に、胸が熱くなる。
スター・エメラルドを飾る指輪のプラチナの土台には、なにかの花が彫刻されている。
「これ、カモミール…。」
決して目立ちはしない小さな花。
それを敢えて彫った理由は、きっとローとモモにしかわからないだろう。
『逆境の中で生まれる力』
『大きな希望』
ローはその花が、モモのようだと言ってくれた。
震える手で、箱から指輪を取り出してみる。
「あ…。」
指輪の裏側に彫られたメッセージに、モモの瞳から涙が零れた。
『愛してる』
ローは好きだの、愛してるだの、口には出してくれない。
その代わりに、ここに本当の気持ちを綴った。
『愛してる』
この指輪をしている限り、何度でもその気持ちを噛みしめることができる。