第13章 証
「上…?」
言葉につられて空を見上げる。
(ああ、展望デッキのことね。)
本来は見張りのために使われる場所。
ずいぶんと高度があることもあり、モモは一度もそこに立ったことがない。
「いいけど…、もしローが酔っ払って足を踏み外しても、わたし助けてあげられないよ?」
「バカ、そんなドジ踏むか。」
“ROOM”
ブゥン、とサークルが船を包み込む。
“タクト”
パッと景色が変わり、強い風が頬を撫でつけた。
瞬きをする間に移動したのは、展望デッキ。
「…確かに、足を踏み外すヒマもなかったね。」
でも、思いのほか風が強い。
落ちやしないだろうが、不安からローの腕に自分の腕を絡ませた。
「なんだ、怖ェのか?」
「ん、ちょっと…。--あッ!?」
目の前の星空に、キラリと流れる光を見つける。
「ねえ、ロー! 今見た? 流れ星ッ!」
さっきの恐怖はどこへやら。
モモは興奮気味に夜空を指差す。
「あ…、また…!」
ほら、とローを急かすモモの方が、よっぽど可愛くて、空なんか見ていられなくなる。
「もう、ローってば、ちゃんと見てる?」
「ああ、見てる。」
自分だけの星を、しっかりと。
「モモ。」
「うん?」
空ばっかり見て、こちらを向かない彼女の手に、リボンがかかった小さな小箱を握らせた。
「え、なに?」
驚いて振り返り、手の中の小箱とローの顔を交互に見た。
「やるよ。」
「……え?」
いきなりくれると言われても…。
「なぁに、これ。どうしたの?」
ローはモモの質問に答えず、ただ黙っている。
「…? 開けていいの?」
沈黙を了承と捉えて、リボンを紐解き、小箱をパクリと開けてみる。
「……え?」
箱の中には、キラリと輝く指輪が納められていた。
「ロー、これ…。」
指輪の中央には1カラット程の大きな宝石が鎮座している。
澄み渡る緑は清らかで、それでいて、光の加減によっては金色に見えたりもする。
まるで、モモの瞳の色と同じように。
(これって、確か…。)