第13章 証
「オマエら、出航するぞ。」
「「アイアイサー!!」」
ローの一声で、ようやく待ちに待った出航となる。
碇が上げられ、帆が広がる。
海賊旗をはためかせながら、船出のときがくる。
(さようなら。)
モモにいろんな初めてを教えてくれた島に別れを告げた。
「よっしゃ! 景気づけに宴でもしようぜ。モモ、酒とツマミ持ってきて!」
「ええ? もうお酒飲むの? しょうがないなぁ…。」
あっという間にどんちゃん騒ぎする3人に苦笑しながら、モモは食事の準備をした。
数時間後にはすっかり夜の帳が落ち、宴と称した食事は泥酔という名の終幕を迎えていた。
やれやれ、と大きなイビキをかいてデッキに転がる3人に毛布を掛けてやりながら、片付けをする。
「そんなもん、明日コイツらにやらせればいい。」
デッキの柵にもたれながら、ローはひとり酒瓶を傾けていた。
「そんなことしてたら、昼過ぎまで散らかりっぱなしになっちゃうでしょ。」
これは確実に二日酔いコースだと思う。
今日のうちに酔い冷ましの薬を調合しておいた方が良さそうだ。
それに比べて、ローが酔う姿は一度も見たことがない。
「ローはお酒が強いのね。」
「まぁな。」
ローからしてみれば、どうやったらこんな無様に醜態を晒せるかが疑問である。
「ふふ、わたしはお酒が弱いから、羨ましいわ。」
そういえば、彼女は島でメルディアに酒を飲まされ、ひと口でひっくり返っていた。
「…お前、俺がいないところで、もう二度と酒を口にするなよ。」
あのときのモモは誰から見ても、「お持ち帰り出来ます」と言っているようなものだった。
もしも誰かに持ち帰られていたら、と想像するだけで殺意が湧く。
「…ぜったい飲まないから、そんな怖い顔しないで。」
本気の怒気を含んだ雰囲気に、自分の酒癖はそこまでヒドいのかと心配になる。
「絶対、だぞ。 誓うな?」
念押しまでしてくるローに、コクコクと大きく頷いてみせる。
「なら、いい。」
そう言って酒瓶を一気に煽ると、ローはモモの手を取り言った。
「オイ、…少し、上に行かねェか。」