第13章 証
次の日、モモの筋肉痛はすっかり良くなり、力いっぱい動けるようになった。
今日は出航の日。
筋肉痛で身悶えていては締まらないので良かった。
「あれ、モモ、船長は~?」
「わからない。気がついたら、もういなかったの。」
朝は確かにいたのに、昼前、気がついたときには船にはいなかった。
昨日、必要なものがどうとかって言ってたから、街に出たのかもしれない。
(でも、一言くらい声を掛けてくれればいいのに…。)
昨日もそうだけど、急にいなくなってしまうのだ。
「まあ、いいわ。わたしも今日はプランターの手入れの続きがしたいし。」
ローにだって、ひとりでやりたいことがあるのかもしれない。
そう思うことにして、モモはジョウロ片手にデッキに出た。
潮風に負けないよう、強く育てと、慈しみの歌を唄いながらみんなに水をあげたのだ。
歌で育てた薬草たちは、いったいどんな芽を出すのだろう。楽しみでならない。
「はーあ、キャプテン遅いねぇ。」
時刻は日が傾いて夕方になったが、ローは未だ帰って来ない。
ログはとっくに溜まっているというのに。
「…なにかあったのかな?」
連絡もなく、こうも遅いとだんだん心配になってくる。
例えば誰かに襲われているとか。
「うーん、キャプテンに限ってそんなことはないと思うけどなぁ。」
もともとローは船長でありながら、単独行動が多い男だ。
幾戦の死線をくぐり抜けてきたため、モモが心配するようなことはないと思うが、確かに出航時間になっても船に戻らないことは珍しかった。
「わたし、ちょっとそこまで見てこようかな…。」
「ダメだよ。モモまでいなくなってどうすんの。キャプテンなら、きっとすぐ--」
そのとき、シャチとペンギンが同時に声を上げた。
「「あ、船長!」」
その声に反応して、船から身を乗り出すと、大太刀を携えて悠長に歩く、いつものローがいた。
「船長、遅いッスよ! もうみんな、とっくに準備できてるのに!」
出航の指示をした本人が遅れて来ては締まらない。
「ああ、悪いな。思ったより時間がかかっちまった。」
たいして悪びれもせずに、ローは船へと上がってきた。