第54章 【番外編①】海賊夫妻の始まりは
コハクに請われるまま雑貨屋で少しの買い物を済ませたモモは、外に出たところでローたちと鉢合わせた。
「あ、ちょうどよかった。こっちの買い物は終わったの。……ずいぶんたくさん買ったのね。」
手ぶらのローと、大荷物を抱える仲間たち。
ローがその気になれば一瞬で荷物を船へ運ぶこともできるけれど、能力を広範囲に展開すると体力が削られるため、誰もそれを願おうとはしない。
「欲しかったものは買えた?」
「まあ……、希望どおりにはいかなかったがな。」
「大丈夫、ローはなにを着ても格好いいよ!」
ローが求めていたものが彼の服だと信じて疑わないモモは、本気でそう褒めた。
上半身裸に前開きのパーカー1枚といっただらしない恰好ですら様になるのだ、今さら服にこだわりを見せたところで彼の魅力は変わらない。
けれどもローはなぜか、微妙な顔でモモの頭をわしわし撫でた。
「いちゃついてないで、早く船に戻ろうぜ。」
名実共に両親が揃ったコハクは、親がいちゃつく様子にげんなりしていた。
が、今さらそんなことを気にするだけ無駄である。
「そうよね、そろそろ帰ってあげないとベポが可哀想だわ。」
娯楽もなにもない村だから、今夜は買い溜めたばかりの酒樽を開けて宴を開くだろう。
きっとベポも、楽しみに待っている。
船に戻ったら、モモは森へ出掛けて大好きな薬草収集に励もう。
そう考えて道すがら森を眺めていたら、弓を携えた村の少年が森へ入っていくのを見かけた。
コハクよりは年上の、けれども幼さを残した少年だ。
きっとこれから狩りに出掛けるのだろう。
自給自足の村ならば、狩りは生活のために欠かせない仕事。
しかし、少年の瞳には並々ならぬ決意が浮かんでいるような色が垣間見え、なんだか妙に気になってしまった。