• テキストサイズ

セイレーンの歌【ONE PIECE】

第53章 セイレーンの歌




迎えに行った彼女は、ローにとって大切な人。


失ったものは多い。

愛する息子が誕生する瞬間。
息子の成長と、彼女が母になっていく過程。

長くて美しかったキャラメル色の髪は、ローが「切るな」と言ったもの。

6年前、まだ少女だったモモと現在23歳になったモモが重なり合う。

若々しいけれど、幼さが消えた顔。
より女性らしくなった身体。
短くなってしまった髪。

透きとおった金緑色の瞳。
純粋無垢な心。
美しい、セイレーンの歌。

6年の間に、変わってしまったもの。
6年の間に、変わらずにいるもの。

すべて、ローが愛した“モモ”そのもの。


なにを言おう。

記憶を封じ、消し去った彼女に。

勝手なことをしやがって。
辛い思いをさせて悪かった。
記憶を取り戻したぞ。

言うべきことは、山ほどある。

でも、今口にすべき言葉は、そのどれでもなかった。


目まぐるしい量の記憶に押し潰されそうになりながら、ローは思っていた。

再び会えたなら、伝えたい言葉がある。

それは、コラソンに教えてもらった言葉。
それは、誓いの指輪に込めた言葉。

それは、彼女にだけ囁く言葉。


こちらの様子を窺いながら、胸の下で組み合わせた片手を、左手を取った。

ぱちりと瞬く金緑色の瞳は今も昔も、ローだけを映している。

たったひとりで苦難を乗り越えてきた彼女の指先に口づけて、敬意と、そして愛情を込め、心からの言葉を囁いた。


「愛してる。」



/ 1817ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp