第13章 証
「オイ、そんなところで縮こまってんじゃねェよ。こっち来い。」
「無理…ッ、ぜったい無理!」
まるで置物にでもなったかのように、モモはローに背を向け、バスタブの端にへばりついて離れない。
「ヤルことヤッてんだ、今さら恥ずかしがることなんてないだろ。」
「……ッ」
ローの俗物的な言いように、耳まで真っ赤にしてしまう。
それとこれとは、別問題だ。
第一、こんな明るいところで、彼の生まれたままの姿を見るなんて初めてなのに。
「…いつもは、ズボンやシャツとか…、なにか着てるじゃない。」
お互い裸になって…という場はなかった気がする。
「そうだったか…?」
「そうよ。わたしは、その…、アレだけど、ローの裸なんて見たことないもの。」
いつも自分ばかりが脱がされてしまう。
「なんだお前、拗ねてんのか? じゃあ、遠慮しねェでじっくり見ろよ。」
ほら、とローはモモの腰に腕をまわすと、ベリッと端っこから引っ剥がした。
「ふぇ…ッ」
モモが情けない声を出すと同時に、クルリとこちらを向かせ、膝の上に座らした。
「ゃ…ッ」
「嫌じゃないだろ。ほら、よく見ろよ。」
顔を覆う手を外して引っ張り上げ、自分の胸に当ててやる。
「……ッ」
そのまま今度は腹に手を滑らせる。
逞しく鍛え上げられた身体に、モモの手があちらこちら這った。
昔ついた古い傷痕も、信念の象徴のタトゥーも、全てモモに晒け出す。
自分がモモの全てを見たいように、彼女にも自分の全てを見て欲しい。
「もう…、いいから…。」
刺激が強すぎて、のぼせてしまいそうだ。
「まだだ、ほら、もっと見ろ。」
それでもローは許してくれない。
スルリ、と手を下腹部へ這わされた。
すると、お湯よりも遥かに熱を持ったなにかが触れた。
「--!」
その正体がわからないほど、もうモモは純朴ではない。
「ロー…ッ」
「なんだよ。」
「あ、当たって…。」
モモの指摘にローは、ああ、となんでもないふうに答えた。
「しょうがねェだろ、こんなに興奮してんだから。」
好きな女に触れられて、反応しないわけがない。