第13章 証
ガシャーン!
バスルームにけたたましい音が響いた。
「…ああ、やっちゃった。」
身体が傾いだのに驚いて、咄嗟に棚に手をついたのだ。
そのおかげですっ転ぶという惨事は回避できだが、棚に置いてあった石けんやらシャンプーやらが落下した。
(割れてはなさそうだけど…。)
自分のドジさに嫌になる。
バスタブに片足だけ突っ込んだ状態で身を屈め、二次災害の原因になりそうな石けんを拾い上げた。
そのとき…。
「オイ、大丈夫か…ッ。まさかぶっ倒れたんじゃねェだろうな。」
バン、と勢いよくバスルームのドアが開かれた。
(……え?)
屈んだ状態から見上げてみると、そこには心配して駆けつけたローがいた。
かたやモモは、素っ裸であられもない姿を晒している。
「きゃああぁぁ!」
驚きと混乱で、思いっきりバスタブに飛び込んだ。
バシャーン
なみなみに張られたお湯が、その勢いに押されて飛沫と化す。
ビシャビシャビシャ…。
熱いお湯が、ローの服をびしょびしょに濡らす。
「「………。」」
もう、このまま沈んでしまいたい。
「……ごめんなさい。」
消え入りそうな声で謝ってみたが、ローを振り向く勇気が出ない。
ハァ、とため息が落ちた。
それと同時にバサリと衣擦れの音が聞こえる。
「…え?」
ついその音に反応して振り向いてみると、なんとローが服を脱ぎ始めたではないか。
「ちょ…、なにして…ッ」
「なにって、こんなびしょ濡れで部屋に戻れるわけねェだろ。俺もこのまま入る。」
う、嘘でしょう…!?
「あ、じゃあ…わたし、もう出るね。」
片手で胸を隠しながら、バスタブから立ち上がる。
これだけでも、ものすごく恥ずかしい。
しかし、その肩をローが押しとどめた。
「待てよ、誰かのせいで湯の量が減った。…責任、とるよな?」
「じゃ、じゃあ…、今すぐ沸かして--」
「必要ねェ。」
モモの提案をズバッと切り捨てると、ローはあっという間に全ての服を脱ぎ捨ててしまった。
(な、なんでこんなことに…。)
ザブリ、とローの身体がバスタブに入ってくる。
すっかり嵩を減らしたバスタブは、体積が増したことにより、もとのちょうど良い湯量に戻った。