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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第53章 セイレーンの歌




一同のもとに降り立ったのは、墓の守り人マルコだった。
迷わずにたどり着けたのか、様子を見にきてくれたらしい。

「ふ、不死鳥! 驚かすんじゃねぇよ!」

「驚かしたつもりはねぇが、おもしろそうな話をしてたもんで、ついな。」

「立ち聞き、反対!」

シャチとベポが揃って抗議をしたものの、その腰は引けている。
なにせ、不死鳥マルコといえば、ローの懸賞金を遥かに上回る大物だ。

彼を前にしたら、シャチやベポなど雑魚に等しく、小物臭が漂ってしまうのは不可避である。

「なんだ、俺たちが悪さしねェか見張りに来たのか?」

「人聞きが悪い。そんなことは思ってねぇよい。お前ら、宿はどうするつもりだ?」

「宿は取らねェ。船までさほど距離があるわけじゃねェしな。」

「そうかい。んじゃ、村の食堂まで来な。ひさびさの来島者だ、村の連中がメシくらい振舞ってくれるとよ。」

隠れ里であるこの島は、白ひげと関連がある事情も含め、政府に見つからないよう元幹部たちが尽力している。
そのせいで外からの客が少ないのだが、それにしても村人たちには危機感がない。

優しく穏やかな故郷こそ、白ひげが守りたかった宝。

しかし、そういう人間に囲まれると居心地が悪いローは、マルコの誘いを断ろうとした。
断ろうとしたのだが……。

「馴れ合うつもりはねェ。俺たちは――」

「酒!? 酒飲めるんスか!?」

「美味しいご飯、やったー!!」

船長の声を遮り、勝手に喜ぶ仲間たちに頭痛を堪える。

「決まり、だな?」

「……チッ。おい、モモ、そろそろ終わるか?」

この騒動の中、黙ってエースとの再会を喜んでいたモモは、名前を呼ばれてようやく顔を上げた。

「あ、うん。ごめんなさい、遅くなって……って、マルコさん! いつの間にいらっしゃったんですか?」

「ん? ついさっきな。」

「気づかなかったんだ……。」

歩み寄りながら驚くモモを鈍感と呼ぶべきか、驚異の集中力だと褒めるべきか。

「気が済んだら、村へ行くぞ。」

「わかった、もう大丈夫。コハク、行きましょ。」

小さな背中を押したモモは、ぞろぞろと引き上げていく仲間たちと共になだらかな坂を下り始めた。
途中、小石に躓いて転びそうになる姿は、どちらが子供かわからなくなったけれど。



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