第13章 証
「あ、おかえりキャプテン。」
ベポがキッチンから顔を覗かせた。
「ベポ、ログの具合はどうだ?」
「んー、明日には溜まるよ。」
つまり、明日にはこの島を出るということ。
「なら、全員明日に向けてしっかり準備しとけよ。シャチとペンギンにも伝えとけ。」
「アイアイ!」
この島に来て、もう一週間が経つのだ。
メルディアと出会い、アイフリードと戦った。
初めてのデート。洞窟での冒険。
思い出がギュッと詰まった一週間。
あっという間に過ぎてしまった。
「なんだか、寂しいな。」
「なに言ってんだ、グランドラインは広い。寂しがってるヒマなんかねェよ。」
これから冒険する島は、まだまだたくさんあるのだ。
「そうだよ、モモ。そういうの、寂しいんじゃなくて、楽しみっていうんだよ。」
寂しいんじゃなくて、楽しみ。
「うん、そうね。…楽しみだわ!」
明日、また新しい冒険が始まるんだから。
部屋に戻って、早速旅立ちのための準備をした。
「うーん、わたしはこれといって必要なものは特にないかな。」
苗も種も、土も手に入れた。
食料や酒、日常品の補充もしたし、あとは出航を待つだけだ。
「欲がねェな。もっと色々買っちまえばいいんだ。」
結局、モモはこの島に来て、服やアクセサリー、香水といったような女の子が誰しも欲しがるものを購入することはなかった。
「いいの。わたしにはそういうの、不釣り合いだし。」
それに、自分を飾るものは装飾品ではなく、昨日ローが摘んでくれたカモミールの花で十分だ。
あのカモミールは、今日、押し花にした。
そうすればいつまでも素敵な思い出は色褪せないままにできる。
「ローは? もう準備できた?」
「ああ、だいたいな。あとひとつ、必要なものがあるが、それは明日取りに行く。」
なんだ、今日街に行っていたなら買ってくれば良かったのに…。
そういえば、ローは今日、街でなにをしていたのだろう。