第13章 証
昼食をすましたあと、モモは昨日採取した土を使って、早速プランターの植え替えを行っていた。
「…これでよし、っと。」
ポンポンとスコップで土を叩き、完成したプランターゾーンを眺める。
「ふふ、成長が楽しみね。」
ここへ来て、ずいぶんと種類が増えたものだ。
船の上とはいえ、すっかりこの一帯はモモの楽園となった。
「あ、そうそう。この子を忘れていたわ。」
ポケットから真っ赤な種を取り出す。
菜園でもらった食虫植物の種。
どんな子に育つかはまったく想像つかないけど、そろそろ植えてやらねばと思っていた。
植物にも相性というものがあり、一緒に植えてはいけないものもある。
この子については、どんな影響があるかわからないため、小さな鉢植えに別で植えた。
「早く大きくなってね。」
モモは鼻歌混じりで、ジョウロから水をあげた。
「オイ、身体は平気なのか?」
突然背後から声をかけられて、ビクンと身体を跳ねさせる。
「きゃ…ッ! あ、いたた…。」
驚いたついでに筋肉を刺激してしまい、悶絶する。
「なにしてんだ…。」
振り向くと、呆れた顔をしたローが立っている。
「いたた…、ロー、おかえりなさい。」
ああ、と頷くと、ローはモモがいじっていたプランターを一瞥した。
「まったく、ゆっくりしてろと言っておいたはずだが…。」
「え、してるよ?」
モモの感覚からして、土いじりは『ゆっくり』に入るのだが。
「こういう力作業をするときは、俺がいるときにしろ。」
「力作業って…。」
ただの植え替えだ。
ローが心配することはなにもないのに。
彼はちょっと過保護なところがある。
だいたい、なにも言わずに出かけてしまったのは、ローの方だ。
「そういえば、どこに行ってたの?」
「ああ、ちょっと、な。」
なんとも歯切れの悪い言い方をされた。
「…?」
「なんだ、寂しかったのか?」
「そういうわけじゃないけど。」
起きたらいなかったから、気になっただけだ。
「なんだよ、寂しくねェのか。」
明らかにムッとされた。
ああ、寂しがって欲しいのね。
ローがたまに見せる、そういうところが好き。
「寂しかったよ。置いて行かないで。」
だから彼が欲しい言葉をあげた。