第52章 ハート

身体が交わり、吐息が混じり、熱を分かち合う。
遠慮もなしに突かれ続けると、いくら支えられていても心許なくて、自らもローの背中に腕を回した。

皮膚が盛り上がった海賊旗マークのタトゥーを無意識に指でなぞって、官能の息を吐く。

｢……挑発のつもりか？｣

触れる指ですら煽る材料となるのなら、１ミリだって動けない。
ならばもうどうでもいいかと早々に諦め、浮き彫りになった鎖骨に頬を寄せてしなだれ掛かる。

｢……おい。｣

不満そうなその声は、キスができないとでも言いたいのだろうが、そんな我儘は無視して瞳を閉じてみた。

トクン、トクンと心音が聞こえる。
ローの中から聞こえる音は、モモの心の音。

激しい行為とは裏腹に緩やかになった心音が、今の自分の心を表していた。

夢のように居心地が良く、母の胎内に浮かんでいるような安心感。
この腕の中こそが、わたしの居場所。

｢眠いのか？｣

｢……寝かせてくれるの？｣

後頭部に当てられていた手が髪を梳き、額に口づけが落ちる。

｢冗談だろ？｣

｢冗談よ。｣

こんな燻った身体で、呑気に眠りにつけるはずがなく、続きを求めて頬擦りをした。

｢あ、あ、はぁ……ッ｣

応えるように再開した律動はストロークが長く、ぎりぎりまで引き抜いては根元まで穿たれる。
膝を立て、ローの胸に体重を預けるような恰好でむちゃくちゃに突き上げられたら、ベッドが軋んで激しい音を立てる。

まるで船全体が揺れているような錯覚まで感じ、仲間たちに気づかれているのではと羞恥が走った。

けれど、そんなことを気にしていられたのは僅かな時間で、すぐに快感の波に攫われたモモは、堪えることもできずに全身を戦慄かせた。

｢んッ、も……、あ、あー……ッ｣

我慢できずに昇りつめ、蜜路を蠢かせて絶頂する。
同じタイミングで深く突き刺したローは、モモの下半身を沈み込ませて結合部をこれでもかというほど密着させた。

花芽に下生えがちくちく当たり、新たな快感を生む。
絶頂している最中に受ける刺激はなによりも敏感で、苦悶の声を上げながら中にいるローをぎちぎちに締めつけた。

｢ひぐ……ッ、あぁ…ん……ッ｣

｢く……ッ｣

艶めかしい呻き声を漏らしたローは、密着させた結合部をそのままに、滾る欲望をモモの中に吐き出した。