第13章 証
足下のカモミールをひとつ摘み、モモの髪に飾ってやった。
「…似合うな。」
「本当? 嬉しい。」
カモミールの花は、どんな髪飾りよりもモモの魅力を引き出してくれる。
幸せそうに微笑むモモが、よりいっそう眩しく見えて、つい目を細めてしまう。
「ねえ、ロー。」
「なんだ。」
「大好きよ。」
なんでもないように告げられた愛の言葉に、不覚にも言葉を失ってしまう。
「…なッ、なんだよ、急に。」
「ふふ。だって、そう思ったんだもの。」
ローと出会ってから、胸を埋め尽くすこの想い。
言葉にする以外、どうやって伝えたらいいかモモにはわからないのだ。
「……。」
「あれ、ロー、照れてるの?」
無表情な彼の、新しい顔を発見した。
「バカ言うんじゃねェよ。んなわけねェだろ。」
「嘘。だって、耳が少し赤いもの。」
ほんのり色づいた耳が、彼の心の内を教えてくれる。
「…ッ、赤くねェよ!」
誤魔化すように、ぐしぐしと耳を掻いた。
(やっぱり、照れてるんだ。)
自分の言葉を受け止めてくれる人がいる。
それがこんなに幸せだなんて。
モモは嬉しくなって、カモミール畑でクルリと踊った。
「オイ…。」
転ぶから止めろ、と言おうとして、言葉を飲んだ。
彼女があんまりにも幸せそうに、笑うから。
クルリ、クルリと踊りながら、モモは歌を口ずさんだ。
すると足下のカモミールたちが、歌に喜んでさわさわと揺れる。
カモミールに囲まれて踊るモモの笑顔は、満天の星空よりも、どんな宝石よりも、キラキラと輝いていた。
その笑顔をずっと見ていたくて、ローはモモの気がすむまでの間、ずっと傍で見守っていた。