第52章 ハート
モモとローが1番に心配していたのは、やはり仲間の安否。
彼らならば無事にいると信じていても、心のどこかでは「もしかしたら……」という不安が常に居座っていた。
そんな二人の不安を消し去るかのように、船を停泊させていた岸にたどり着くと、涙を流しながら駆け寄る仲間の姿があった。
「モモ、キャプテン……! 無事だったんだね! よかった、よかったよォォ!!」
「二人とも、よく無事で……! モモたちになにかあったら、俺は、俺はァ!!」
がばっと抱きついてくるベポとシャチの手から、さりげなくローがモモを守る。
感極まったベポの腕力はクマ並みだし、シャチには抱きつかせたくない。
あとついでに、二人とも涙と鼻水まみれで小汚い。
「必ず無事に戻ると言っただろうが。……お前ら、誰ひとりとして欠けてねェだろうな?」
「アイアイ、もちろんだよ! ペンギンは負傷しちゃってオペ中だけど、ジャンバールもコハクも無事だから。」
「え……ッ」
コハクの無事を聞いて、モモは心から安心した。
やはり、サカズキが口にした情報は嘘だったのだ。
でも、ペンギンが深手を負ったと知り、手放しに喜べない状況に困惑した。
「俺の息子だからな、コハクが無事なのは当然だ。ペンギンの容態は?」
「背骨にヒビが入ってて。あと、肺が片方潰れてた。今、麦わらの船医がうちの船でオペをしてくれてる。」
「そうか、なら俺も向かおう。」
平然と船に戻ろうとするローの隣で、モモの顔はさぁっと青ざめた。
背骨にヒビが入り、肺が潰れているなんて、命にも関わる大怪我だ。
「大丈夫だよ、モモ。キャプテンのオペなら、すぐに元気になる。」
「そうそう、なんていっても、うちの船長は世界一の外科医だからな!」
なんにも心配していないと言いたげな二人に、モモの心は少しだけ宥められた。
しかし、だからといって落ち着いてもいられずに、モモはローの背中を追って潜水艦へとよじ登る。
「……母さん!」
かじかむ手で梯子を掴んだ瞬間、頭上から愛する息子の声が聞こえた。