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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第52章 ハート




ドッドッと心臓が早鐘を打つ。
よかった、生きていた……と思ったけれど、胸の中にある心臓は己のものではないとモモは遅れて気がついた。

「モモッ!」

慌てた表情をして、ローがモモを抱き起こした。
いつの間にかモモは転んでいたようで、そういえば膝や肘や、あちこちが痛い。

「馬鹿野郎ッ、なんて無茶を……!」

心臓がまたドドッと激しく脈を打つ。
胸に収まる心の音は、ローの心情をありのままに現している。

「わたし、生きて…る……?」

「当たり前だッ! お前、また勝手に……!」

きつく詰る眼差しを受けて、モモはゆっくり首を左右に振る。

「違うの、ロー。もう二度と、あなたを置いていったりはしないから。」

これまで散々ローの想いを無視して行動したモモの言葉など、彼は信じられないだろう。
でも、骨が軋むくらいローが強く抱きしめてくれるから、モモは「ごめんね」と小さく謝った。

「勝手にいなくなろうとするな。絶対に……。」

耳もとで囁かれた声に、しっかりと頷く。

「ニシシ、よかったな! モモが見つかって。」

間近で緊張感のない声を聞き、モモはふと我に返る。
安心してしまったばかりに忘れかけていたが、戦いはまだ終わってはいないのだ。

「ルフィ、ありがとう! わたし、あなたの姿が見えて、それで……!」

「ああ、目が合ったもんな。間に合ってよかった!」

あの時モモは彼方から駆けつけてくるルフィの姿を目にして、彼に懸けようとサカズキを挑発した。
かなり無謀な作戦だったとは思うけれど、結果としてモモもローも無事なのだから正解だったはず。

しかし、ローの表情は厳しいままだ。

「間に合ってねェ。お前の髪が……。」

ローの手が頭を撫ぜ、髪を梳く。
艶やかな髪を梳いた指は、モモの肩のあたりで動きを止める。

そこから先の腰まであったはずのキャラメル色の髪は、サカズキのマグマに焼かれ、跡形もなく燃え散ってしまっていた。



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