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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第52章 ハート




一端の海賊ならば、自分たちの窮地を他の勢力に頼ることが、どれだけ恥ずべき行為なのかを知っている。
かつて一船を率いる主であったジャンバールもまた、己の力よりも多勢を頼る行為を恥ずかしいと思っている。

しかし、時には恥もプライドも捨て、優先しなくてはならないものがあるのだ。

ジャンバールにとって、今がまさにそれ。

大切な仲間の命が懸かっているというのに、守らなくてはいけない誇りなど、ジャンバールは持ち合わせていない。

奴隷と化し、人間としての矜持も捨てて生き延びてきた自分を助けてくれたのは、他ならぬロー。
そして、どんなに自分が傷つこうとも、いつでも仲間を守り、愛してくれたモモ。

部下として、仲間として、二人が共に歩む未来を絶対に勝ち取らなくては。

「頼む、麦わら! 船長とモモの行方がわからない! それに、コハクも……ッ!」

現況としてわからないことがあまりに多く、いくら同盟を結んでいるとはいえ、麦わらの一味には一切の得もなければ、大嵐の中、舵も効かぬボロ船で大海を旅するほどの危険がつきまとう。
彼らがジャンバールの願いを聞く義理なんかない。

「同盟の範疇を超えた頼みだとはわかっている。俺に払える代償なら、いくらでも払う! だから……ッ」

もしも命を寄越せと言うのなら、喜んで差し出そう。
それほどの覚悟を持ってルフィに頭を下げたジャンバールだったが、しかし、その頭はすぐに彼の手によって元の位置に戻されてしまう。

「おい、お前! 同盟とかそんなのどうでもいいから、早くトラ男とモモの居場所を言えッ!」

胸ぐらを掴んで怒鳴られ、こんな状況なのに、ジャンバールは一瞬ぽかんと呆けた。

「どこだ、おれはどこへ向かえばいい!?」

「せ、正確な場所は俺にも……。だが、つい先頃、あそこで大きな爆発が……ッ」

ジャンバールが指差す先は、島で1番黒煙が立ち上っている場所。
サカズキの能力を鑑みても、そこに彼がいるのは間違いなさそうだ。



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