第52章 ハート
情報を制す者は、勝敗を制す。
ライラによってもたらされた情報は、麦わらの一味にとって非常に重要な知らせだった。
モモの捜索に成功したハートの海賊団が、サカズキを追って船を出した。
彼らが自分たちと合流せずに、無謀にもサカズキを追っていったのは、緊急を要する事態が発生したからだ。
相手は海軍元帥サカズキ。
覇気を極めたローであっても正面激突したら勝てる相手としてほど遠く、迅速な加勢が必要となる。
ライラから事情を聞いたルフィたちは、サボたちからエターナルポースをもらって全速力で大海原を駆ける。
サカズキはルフィにとって、愛する兄の命を奪った因縁の相手でもあった。
そのサカズキとローが闘う可能性があると知っては、黙ってなどいられない。
もう、大切な人を目の前で失う経験は二度と御免だ。
サウザンドサニー号の持つ機能を駆使して、三日三晩駆け抜いた。
海域の気候が安定してきて、凍てつく寒さが船を襲う。
海軍の基地となれば、通常であれば簡単には近づかせてもらえないはず。
けれども島ではすでに事件が起きていて、運も味方し、ルフィたちが敵船に見つかることはなかった。
「おい、ルフィ! あれ!」
島に近づいた途端、ハートの海賊団の船を発見できたのは、本当に強運としか言わざるを得ない。
しかし、安心できない状況が船の後ろに広がっていた。
「島が燃えてる……。もう戦いが始まってんのか?」
ウソップのスコープを覗かなくても、燃える島の全容は誰の目から見ても明らかであった。
雲をも黒く染める煙が上がり、物々しい空気が張りつめている。
「トラ男はもう、赤犬と戦ってんのか!?」
「そんなのわからないわよ。でも、船があるなら、誰かが残っているはずでしょ。」
「そっか! おぉ~いッ、トラ男~ッ!!」
「大声出すなよ、ルフィ! 敵に見つかったらどうすんだ!」
焦ったチョッパーがルフィの口を塞ぐが、声を張り上げた意味は確かにあった。
声を聞きつけデッキに出てきた男が、こちらに向かって手を振っている。
「あれは確か、ジャンバール……?」
ローの配下において1番の新参者、ジャンバール。
ルフィに負けず劣らず、大声で怒鳴った。
「――助けてくれ、麦わらッ!!」