第52章 ハート
麦わらの一味と革命軍には、深い繋がりがある。
総司令官であるモンキー・D・ドラゴンがルフィの父親であることは、すでに周知の事実。
しかし、ルフィ自体はドラゴンと顔を合わせたことはなく、一番の縁も盃を交わした兄、サボだと認識している。
そして偶然にも、麦わらの一味の前に出現した船は、参謀総長であるサボの軍船だった。
「ロビンさーん!」
「……コアラ!」
デッキから顔を覗かせ、大きく手を振っているのはサボの同僚コアラ。
魚人空手の使い手でもある彼女は、ロビンに非常に懐いている。
「ロビンさん、久しぶり~!」
ひらりとサニー号に飛び移ってきたコアラの抱擁を受け止め、ロビンも笑顔で挨拶を返す。
「ええ、久しぶりね。こんなところで会えるなんて、すごい偶然だわ。」
「あ、ううん。偶然じゃないの。私たち、みんながここにいるって知ってて来たんだ。」
「あら、そうなの?」
彼らの出現は偶然ではなく必然。
なんの意味があるのかもわからず不思議に思っていると、遅れて船内からサボが現れた。
「……ルフィ!」
「お~、サボ! 偶然だなァ!」
「だから、偶然じゃないって言われたじゃない。」
コアラの話を丸無視しているルフィに、ナミが呆れたため息を落とす。
「ん、なんだ? 偶然じゃないってどういう意味だ?」
「ああ、俺の……部下が、お前たちの船を発見したんだよ。」
同じくサニー号に乗り移ってきたサボが、事情を説明しながら周囲をきょろきょろ見回した。
「部下? でも俺たち、誰とも会ってねーぞ?」
ウソップの言うとおり、ルフィたちはハートの海賊団と別れてから、一度も誰にも遭遇していない。
発見されたのであれば、少なくとも相手を目にしているはずだ。
「あの子がみんなを見つけたのは、空の上からだから、気がつかなかったのかもね。」
「空から? なんだそいつ、空飛べんのか。すっげ~!」
悪魔の実の能力者でも、空を飛ぶ能力を持つ者は少ない。
海よりも広い空は、誰にも制せぬ自由の領域。
「その反応だと、ここには来てないってことか。……参ったな。」
「なんだ、訳ありか? 話が長くなりそうなら、茶でも淹れるぞ。」
「……一杯もらうよ。」
サボとの再会は、後にハートの海賊団の運命を左右する重要なものであった。