第13章 証
どこかの鉱物学者が言っていた。
鉱石には命が宿っていると。
その話を聞いたとき、なにをバカなことを、と思ったものだ。
けれど、ローは今、その言葉を目の当たりにしている。
壁に埋まる原石たちは、モモの歌に呼応するかのように、キラキラ、キラキラと輝くのだ。
「すごい、神秘的…。綺麗ね。」
その輝きに負けないくらいの眩しい笑顔でモモが笑った。
「鉱石って、こんなに輝くものなのね。どうしたらこんなふうに光るのかしら。」
先ほどの暗闇が嘘のように、洞窟内は明るい。
お互いの顔を確認できるほどだ。
「なに言ってる、お前の歌が原因じゃねェか。」
「え…、そうなの?」
モモはただ、猛獣たちの敵意をなんとかしようと唄っただけ。
それなのに、こんな効果が現れるなんて。
セイレーンの力は、まだモモも把握できないくらい、未知なるものだ。
「あれ、なにかな…あそこだけすごく眩しいね。」
キラキラ…
岩場の隙間から、一際強い光が漏れ出している。
「……! まさか…。」
ローはなにかに思い当たったようで、すぐに周囲にサークルを張った。
“スキャン”
岩の中を探り、目的のものを見つけ出した。
次の瞬間、ローの能力により、それは彼の手のひらにコロリと転がった。
「…なにそれ?」
ローが手にしているのは、ミカンほどの大きさの黒くゴツゴツした鉱石。
内部に原石があるのだろう、内側から強い輝きを放っている。
先ほどの光は、どうやらこれが原因のようだ。
「これを探していた。」
「え、そうだったの?」
モモにはそれがなんなのかわからないけど、ローにとってはとても重要なものらしく、ひどく満足げな表情をしている。
「良かったね、ロー。」
「ああ、お前のおかげだ。」
ローはそれを大事にポケットにしまうと、モモの頭に愛しげにキスをした。
別に自分はなにもしてないけど、ローがそれほどまでに喜んでくれたのなら嬉しい。
「さて、船へ帰るぞ。」
モモの手を引き、来た道を引き返す。
帰り道、ランプの光は消えてしまったけど、そんなものは必要ないくらい、洞窟内は輝き、2人を導いてくれた。