第13章 証
「あ…、ランプが…。」
唯一の灯りが消え、真っ暗闇に覆われる。
「チッ…、モモ、手を離すなよ。」
コクリと頷き、ローの腕をしっかりと握った。
ザワザワと猛獣たちが迫る気配を感じる。
(これ以上は、コイツを危険に晒させちまう。)
「……出るか。」
暗闇の中で聞いたローの言葉には、明らかな諦めの色が滲んでいた。
(きっと、わたしがいるから。)
モモがいるから、ローはなにかを諦めようとしている。
諦めて欲しくない、と思った。
でも、自分がいなければ、とは思わない。
だって、ローは自分を必要としてくれて、それで今、わたしはここにいるのだから。
ローの気持ちに応えたい。
どうすればローはこのまま探し物を続けられる?
みんなが、わたしたちを敵と思わなければいい。
足手まといなわたしが、唯一、役に立てること。
それは…。
唄うこと。
『わたしがいるよ。ねえ、愛しいひと。ずっと傍にいるから…。』
「モモ…?」
突然、澄んだ歌声を奏でるモモを振り向いた。
『波に揺らめくわたしのお城。流れる雲を見上げると、泣きそうになるの。』
ロー、わたしはたいした力もないし、足手まといだけど。
ワガママかもしれない。
でも、わたしのこと、もっと頼って。
『この海に敵しかいなくても、わたしたちを信じてみて。わたしが傍にいることを忘れないで。』
猛獣たち、怯えないで。
わたしたちは敵じゃないよ。
モモを歌を聞き、想いが通じたかのように、猛獣たちから敵意が消えた。
『わたしがいるよ。ねえ、愛しいひと。ずっと傍にいるから。』
『わたしがいるよ。ねえ、君の力に。届け、君のために…。』
洞窟内に風もないのに、さわさわと優しい空気が流れる。
『そうだ、明日一緒に出かけよう。』
『空も海も全部、キラキラ光り輝くよ。君と一緒なら。君を愛しているから。』
モモの歌に、鉱石までもが反応し、淡く輝き始める。
『いつも傍に、いつも。ああ、愛しいひと。ねえ、ずっと、ずっと…。』
これはみんなに唄う、慈愛の歌。
『わたしがいるよ。』
気がつけば、眠る宝石たちは輝きを放ち、洞窟内が満天の星に埋め尽くされていた。