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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第52章 ハート




目覚めるように、瞳を開いた。

すると、先ほどまでのおぼろげな世界が嘘のように、鮮やかな色が目に映る。

純白の銀世界には、モモのすべてが立っている。

「……モモ。」

名前を呼ばれると、途端に涙が零れた。

「泣くな、モモ。」

かさついた指の背で涙を拭われるけど、あとからあとから溢れてきた。

生きている、ローが。

信じなくちゃいけなかったのは、誰よりもモモのはずなのに、どうして惑わされてしまったのだろう。

ローも、コハクも、仲間たちも、誰も自分を置いていかない。
そう信じていたはずなのに。

「誰にでも、迷う時はある。だから、泣くな。」

ローの死を聞かされてからしばらくの間、記憶が飛んでいる。
でも、自分を包囲していたはずの海兵が、いつの間にか倒れ伏していた。

たぶん、ローがやったんじゃない。
モモがこの手で……歌で彼らを殺したのだ。

「わたし……、わたし……。」

「大丈夫だ、なにも心配することはねェ。」

取り返しのつかないことをしてしまったモモを、ローが優しく宥めた。

ローからしてみれば、海兵の命など気に留める必要もないもの。
けれどモモにとって、歌で誰かの命を奪うことは、最も許せないことだった。

その気持ちを、ローは十分に理解している。

“ROOM”

いきなりサークルを展開させたローは、おもむろに地面に伏した海兵に触れる。

“カウンターショック”

凄まじい電撃が海兵の身体を巡り、止まった心臓を刺激する。

すると……。

「げほ……ッ、がは……ッ」

鋭い刺激を受けた海兵が、息を吹き返す。

「え……!?」

驚き瞬いていると、モモの最愛の人は得意気な顔で微笑んだ。

「この俺を誰だと思ってやがる。蘇生なんざ、オペのうちにも入らねェ。」

死闘を繰り広げた彼は、体力を消耗しているはずだ。
ローの能力は、使うほどに体力を浪費していく。

それでも、彼はモモの誇りと歌を守るため、海兵を蘇生させ続けたのだ。



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