第52章 ハート
コラソンという言葉の意味は、ハート、心、そして心臓。
彼から心をもらい、そして幼い頃から医者を志したことから、海賊を名乗る時に己の一味の名を“ハートの海賊団”と決めた。
医者の誇り、コラソンへの想い。
すべてを忘れないために、己の肌にハートを刻んだ。
『居心地が悪いファミリーだったが、コラソンのコードネームだけは気に入ってんだ。心ってのは目に見えねェが、一番大事なもんだろ?』
心がなく、ただ動くだけなら人形と同じ。
あのドフラミンゴですら、ファミリーに対して愛情という心を持っていた。
『思い出させてやれ。彼女に、心を……。』
抱きしめたモモから伝わる鼓動。
モモの心臓は間違いなく動いているのに、心だけがそこにない。
いや、違う。
心が消えたのではなく、凍てついて動かないだけだ。
なら、目に見えない心をどうすれば解かすことができるのか。
“ROOM”
モモとローを包む、小さなサークルが出現する。
そして、ゆっくりと身体を離し、彼女の胸に手を当てた。
心臓とは、人間のエンジンであり、神秘の臓器。
主な役割は、血液を体内に循環させること。
だが、ごく稀に、奇跡的な出来事を引き起こす。
ある医学者は言った。
“心臓には、記憶が残る”と。
心臓移植をした患者に、提供者の記憶が残るという症例は、ローも知っていた。
根拠などはなく、未だ証明されていない。
もしかしたら、ただの思い込みの可能性だってある。
それでも、おそらく世界で一番心臓に触れたであろうローは、心臓の記憶を信じていた。
「俺は、医者だ。」
己の腕には、絶対的な自信がある。
だから、どんな病だって治してみせよう。
例えば、凍りついた心の病だって。
“メス”
ずぶりと、ローの指がモモの胸に……心臓に沈む。