第13章 証
モモは昔から、オバケとかそういう類が大の苦手だ。
暗い夜道なんて全然平気なはずなのに、そこの木陰にオバケがいる、と言われれば怖くて一歩も動けなくなる。
もし海で幽霊船にでも出くわそうものなら、失神して倒れる自信がある。
「なるほどな…。案外可愛いところがあるじゃねェか。」
「可愛いって言わないで!」
クスクス笑うローに、羞恥を通り越して怒りすら感じる。
「そういうが…。なあ、知ってるか? この洞窟はさっきのムカデみたいな凶暴な生物が無数に住み着いているせいで、餌食になったヤツらが星の数ほどいるらしい。」
「え…。」
おどろおどろしい事実に、モモの身体がピシリと固まる。
「ほら、見ろよ。死んでいったヤツらの魂の光があちらこちら…--」
「いやー! やめて、やめて…ッ!」
本気で涙目になって、力の限りローにしがみつく。
ふと洞窟の奥に目を向けると、チラチラと僅かに光が見える。
「やだ…ッ、本当に光ってる…!」
こわい、こわい、と半ばパニック状態に陥るモモの頭をぐしゃぐしゃと撫でつけながらローが言った。
「嘘だ、バカ。そんなわけねェだろ、よく見てみろ。」
「ふぇ…?」
僅かの光のもとをよく確認すると、こちらのランプの灯りを洞窟の壁が反射しているのがわかった。
「なに…、あれ。」
できれば近づきたくないのだが、ローが歩いていくので、背中にへばりつくようにして様子を窺った。
「…これ、宝石?」
光の正体は、壁に埋まる宝石の原石だった。
そういえば、この島は宝石の産地。
洞窟内で採掘できてもおかしくない。
「オバケじゃなかったのね…。」
「当たり前だろ。」
本気で安堵の息を吐くモモに、半ば呆れる。
「だが、いいことを知ったな。これから傍にお前を縛っておきたいときは、この手を使えばいいわけだ。」
「む…、そう何度も引っかからないもの!」
本当は、たぶん引っかかると思う。