第52章 ハート

握り拳から伝わる衝撃波。

六王銃が生み出すそれは、インパクトダイアルの数倍にも匹敵する。

さらに、覇気をも纏えば、その威力は想像もできないほど。

｢がは……ッ｣

骨が砕け、内臓が傷つき、口から大量の血潮が吹き出した。

｢ペ、ペンギン……！！｣

致命傷を負って倒れたペンギンに、ベポとシャチが青ざめた。

｢この…、よくもペンギンを！｣

｢ぶっ飛ばしてやるッ！｣

良くも悪くも、熱くなりやすい２人。
覇気が使えないことも厭わずに、副官へと立ち向かっていく。

｢よ、よせ……ッ｣

激痛を堪えながらも、２人を止める。
しかし、そんなペンギンの言葉が届くほど、２人は冷静ではなかった。

｢弱いやつほど、すぐに熱くなる。｣

副官の握った剣が、覇気に包まれていく。
そして……。

ザンッ！

たった一閃。
ベポの拳法もシャチの銃撃もものともせずに、副官の流れるような剣術は、瞬く間に２人を斬り捨てた。

｢ぐぁ……ッ｣

｢うぅ……。｣

咄嗟に急所は避けたものの、深手を負った２人も崩れ倒れた。

｢シャチ、ベポ……ッ｣

目の前で倒れた仲間たちの傍に行こうと蠢くが、ボロボロになった身体が言うことをきかない。

｢無理をするな。そこで仲間の最期を見ているといい。｣

｢な……ッ、ふざけ……ゴホゴホ……ッ｣

肺が破けたのか、吐血が止まらない。
こうしている間にも、副官の剣が仲間の喉を切り裂こうとしている。

｢ゲホ、ゴホ……ッ、やめ…ろ……！｣

抵抗もできないペンギンたちの前で、副官は思い出したように電伝虫を取り出した。

｢プルプルプル……。｣

こんな時に、いったい誰に電話を掛けているのか。
隙だらけなのに、攻撃をできない自分たちが情けない。

『……わしじゃ。』

電話の向こうで聞こえた声。

海軍を率いる元帥、サカヅキであった。