第52章 ハート

副官の片腕が、黒いオーラで包み込まれる。
武装色の覇気だ。

あの腕で撥を撃たれたら、覇気が使えないシャチとベポはひとたまりもなくなる。

｢ベポもシャチも、下がってろ！｣

唯一の覇気使いであるペンギンが盾になるしかなく、二人を後衛に押しやった。

｢いい心がけだ。だが、どうせ結果は変わらん。トラファルガー・ローもろとも、一味はここで全滅だ。｣

マシンガンの勢いで撥が飛び交い、ペンギンを襲う。

｢く……ッ｣

なんとか剣で弾いて防ぐが、覇気を纏った攻撃を受けてわかった。
ペンギンの覇気は、副官の覇気より劣っている。

相手は、あのサカズキの片腕なのだ。

だけど、ここでペンギンが負ければ、ただでさえ劣勢な戦いがますます悪化してしまう。

｢負けられないッス！｣

地面を蹴り、開いた間合いを一気に詰める。

ガキン……！

刃が交わり、しのぎを削る。
金属音が鳴り響くと同時に、大気も揺れた。

いかに１対３の闘いとはいえ、覇気を使えぬシャチとベポには手も足も出せなかった。

｢船長頼りの一味は、崩壊が早いな。｣

｢そういうセリフは、俺たちを倒してから言え！｣

｢ああ、そうしよう。｣

“嵐脚”

凄まじい蹴りが炸裂すると、風邪の刃…鎌鼬が発生し、飛ぶ斬撃となって襲い来る。

撥とは比較にならないほどの攻撃に、ペンギンは覇気を高めて受け止めようとした。

だが……。

(軌道が…、違う……？)

目に見えない刃。
気がつくのが遅れたが、鎌鼬はペンギンに向かってきてはいない。

もっと後方……シャチとベポを狙っている。

｢ちくしょうッ！｣

一瞬の行動の遅れ。
すぐさま身を翻して仲間を守る。

鮮やかな剣技で鎌鼬を掻き消した。
しかし、そのせいで背中ががら空きとなってしまう。

当然、それを見逃す副官ではない。

｢元帥ならば、そんな愚かな真似はしない。それが、貴様らと我らの大きな違いだ！｣

“六王銃”

六式すべてを極めた者だけが会得できる、最強の技。

回避不能の一撃必殺が今、ペンギンの背中に撃ち込まれた。