第52章 ハート
「キャプテン、どうして電話に出ないのかな……。おれ、なんか嫌な予感がするよ。」
眠り始めた電伝虫を前に、ベポがしょぼんと呟くが、言ってみたところで状況は変わらない。
「ぼーっとしてるヒマはねぇぞ。船長を助けにいくって言い出したのは、お前だろうがベポ。」
「……役に立たないクマで、スミマセン。」
「だから、落ち込んでるヒマもないッスよ。」
ばしりともふもふな背中を叩いたところを見計らって、ジャンバールが口を挟む。
「それで、二手に分かれるとは言うが、人選はどうする?」
ここにいるのは4人。
二手に分かれるとすれば、2人ずつか。
「アイアイ、仕切るなんて100年早いぞ、ジャンバール。お前だけで行ってもいいんだぞ!」
ベポは意地悪のつもりで口にしたことだが、なんとシャチとペンギンも同意する。
「そうだな、ジャンバールと俺たち3人とで分かれよう。」
「……本気か?」
「本気も本気。ジャンバールはある程度の航海術も持ってるし、適任ッスね。」
なんといっても、かつては船長だった男。
一通りのことは、なんでもできる。
それに、モモの護衛は敵に見つからなければ戦闘になることもない。
一方、ローの応援は戦闘が必至だ。
だったら、モモのことはジャンバールに任せた方が戦力も生存率も上がる。
「ならば、俺ではなく、ペンギンがモモのところへ行った方がいいだろう。」
仲間内で1番戦力が高いのはペンギン。
ひとりで行動するのなら、ペンギンが行く方が確実である。
だが、ジャンバールの提案にペンギンは首を左右に振った。
「俺は船長のところへ行くッス。覇気を使えるのは、俺だけだから。」
モモのことを守りたいのは山々。
しかし、ここから先は覇気使いがいなければ、どうにもならない場面があるだろう。
だから、ペンギンはモモのところへは行けない。
「おれもダメだ。嫌な予感がするから、キャプテンを助けにいきたい!」
「言い出しっぺは俺だからな。俺が行くのは当然だろ。」
ベポとシャチも譲らない。
よって、ジャンバールがモモのもとへ行くしかないのだ。