第52章 ハート
ローは、いつもそうだ。
自分の危険は顧みないくせに、部下の危険には嫌ってほど慎重になる。
「……うるせぇ! そんなの、やってみないとわからねぇだろ!」
「生意気だぞ、ジャンバール! お前はキャプテンと付き合いが短いから、そんなことを言えるんだ。おれは、死んでもキャプテンを助けにいくんだ!」
ドフラミンゴを倒すため、別行動をとると言われたあの日。
ローは「ひとりの方が動きやすい」などと理由を述べたが、本当は、死ぬ気だったのだ。
人工悪魔の実…SMILE工場を破壊し、怒ったカイドウとドフラミンゴを衝突させる作戦だとは聞いていた。
だが、あの時、工場を破壊したあと、ローがどんな目に遭うかなんて、考えていなかったのだ。
自分たちにとってローこそが最強で、絶対的王者。
そんな彼が、死ぬ気だったなんて想像もしていなかった。
今回も、そのつもりなのだろうか。
自分ひとりを犠牲にして、最後まで戦うつもりで。
「俺は、認めない。ドフラミンゴの時は麦わらに取られたが、今度は俺たちが船長を救う番だ!」
ジャンバールが言うように、ローが苦戦する相手には敵わず、もしかしたら邪魔になるだけかもしれない。
それでも、前回のようにローばかりを危険に晒せない。
結果、自分の命を落とすことになっても、悔いはなかった。
これだけは絶対に譲れない…と、強固な意志を示したところで、ずっと黙っていたペンギンが口を開く。
「……じゃあ、モモはどうなるんスかね。」
「「……!!」」
言われた瞬間、シャチもベポもハッとした。
「俺たちが船長のところにいって、死ぬのはまぁ…構わない。でも、船に残されたモモとコハクはどうすんスか?」
もしもの話だ。
自分たちはもちろん、ローまでもが動けなくなった場合、船に置いてきたモモたちは、この先どうすればいいのだろう。
船の操縦は知っている。
だけど、それだけで生きていけるほど新世界は甘くない。
なにより、彼女たちが自分たちを置いて逃げることなどありはしないのだ。