第52章 ハート
コラソンの幻影に「これでいいのか?」と尋ねられたが、ではどうすればいいのか。
その答えはローにもわかっていなかった。
「赤犬の動向でも探っておくか……。」
あの男がなにをしているのかを知れば、今後の役にも立つし、赤犬がモモを追えていないことを知れて安心する。
標的の居場所を掴むのは得意だ。
いざ行動しようとして、そういえば電伝虫を所持していたことを思い出す。
(バカか、俺は……。こんなに重要なことを忘れていたとは。)
電伝虫を使って仲間たちと連絡を取れば、彼らの安否などすぐにわかるのに。
進む足を止めずに、電伝虫の受話器をとる。
プルルルル……。
無表情な電伝虫がコール音鳴らすが、いつまで待っても通話が繋がることはない。
「アイツら、なぜ出ない?」
電伝虫は、ローと仲間たちを繋ぐ、唯一の連絡手段。
ローを置いていくことになった彼らは、今頃海の上で無事の知らせる連絡を待っているはず。
それなのに、コール音は一向に鳴り止まず、ローも彼らの無事を知ることができない。
大丈夫だ。
先ほどまでそう思っていたはずなのに、鳴り続けるコール音に、だんだん不安が募ってくる。
天然だが、仲間内では1番の実力者であるペンギン。
かつて船長を務めていた経験を活かし、冷静に物事を判断するジャンパール。
あの2人に任せておけば、作戦はうまくいくと思っていた。
だが、ローの一味には感情ばかりが先立つ者もいる。
お調子者だが、本当は誰より熱い性格のシャチ。
優しさゆえに、時に冷静さを欠くベポ。
そして、普段は素直なのに、肝心なところで頑固なモモ。
姿形は似ていないのに、彼女の頑固さばかりが似てしまったコハク。
多数決をとるならば、感情で動く者の方が圧倒的に多い。
ペンギンとジャンパールは、彼らをうまく説得することができたのだろうか。
無意識のうちに、駆け出していた。
サカズキに命じられ、元帥補佐官が仲間を捕らえるべく動いていた。
ローでこそ、簡単に勝つことができた副官だが、仲間たちには荷が重い。
戦闘になれば、分の悪さは目に見えていた。
「アイツら……! 今どこで、なにをしている……!」