第13章 証
ほどなくして、目的としていた山の中腹にたどり着いた。
岩山が目立つその場所には、ぽっかりと大きく口を開けた洞窟があった。
「ここなの?」
「ああ、中に質のいい石灰があると聞くが。」
確かに雰囲気のある洞窟だ。
この中なら、石灰の他にも、珍しい薬草や茸が生えていそうだ。
少し、ワクワクしてきた。
「なんだか、楽しみね。」
ローの腕から下ろしてもらい、そわそわと洞窟を覗き込む。
「普通、女なら気味が悪いとか言うところじゃねェのか?」
「どうして? 宝物がたくさんありそうよ。」
モモの言う宝物とは、当然薬剤の材料を指すものだ。
金緑の瞳をキラキラとさせ、早く行こうと促す。
「お前も大概、変わった女だな。」
そういうところに惹かれたのだけど。
洞窟内は暗く、持参してきたランプだけが頼りだった。
「オイ、危ねェから俺の後ろを離れるんじゃ…--」
そう言って振り返ると、モモの姿はなかった。
「モモ…!」
いつの間にいなくなった!?
焦って辺りを見回すと、少し離れたところで彼女がローを呼んだ。
「ロー!」
そちらに灯りを向けると、モモが無邪気に笑ってなにかを指差している。
「見て、すごく大きなムカデ! ムカデ油にしたら、すごくたくさん作れそうね。」
モモの前には、2メートルを越す大ムカデがギチギチと音を立てている。
ちなみにムカデ油とは、ムカデを油漬けにした薬で、炎症止めや傷薬になる。
薬の材料扱いされたことに腹を立てたのか、大ムカデは顎をギシャリと開けてモモに噛みつこうとする。
「オイ…!」
“アンピュテート”
素早くサークルを広げ、その場で刀を振ると、離れた場所のムカデの体がバラバラに切り刻まれた。
「あ…。」
ドサドサと散らばるムカデの肉塊をモモは興味深げに見つめる。
「なるほど、こうすれば持ち運びも便利ね。」
ピクピクと動き続ける肉塊を持ち上げようとする。
そんなモモへ大股に距離を詰めると、その手を掴んで引っ張り寄せた。
「そんなもんに触んな! いいか、二度と傍を離れるんじゃねェ。それが出来ねェならずっと抱えて歩くぞ!」
どうやらまた心配させてしまったらしい。
「わかった、言うとおりにする。ごめんなさい。」