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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第51章 選んだ果てに




元帥であるサカズキの補佐官は、並大抵の海兵では務まらない。

強さと行動力はもちろんのこと、さらに時には冷酷さも兼ね備えている。

相手が年端もない子供であろうと、容赦はしない。

「まさか、トラファルガー・ローに子供がいるとはな……。悪魔の因子は、撲滅しなくてはならん。」

先ほど言い放ったことを、運悪くも副官は耳にしていたらしい。

なんとうかつなことか。
己の油断に悔しさが増す。

(いや、どっちみちコイツがオレを見逃すことはない。)

ローの子供であろうとなかろうと、結果としては同じことだ。

コハクが今、一番注意しなければならないこと。
それは、モモの息子だと知られること。

自分にはセイレーンの力は宿っていないが、血縁だけはしっかりと遺伝している。

つまり、コハクは政府にとって価値のある存在だ。

そのことを知られれば、コハクもモモと同じように、追われる身となるだろう。

(それだけじゃない。人質に取られれば、面倒なことになる。)

実のところ、ハートの海賊団で一番厄介な存在は自分。
コハクはそう思っていた。

モモのようにセイレーンの力もなく、己の価値を武器にすることもできない。

だが、モモやロー、他の仲間たちにとっての弱みだ。
もし人質に取られたら、最悪の事態になることが明白である。

(なんとか誤魔化さないと……。)

しかし、叫んだ言葉は取り消せず、そうでなくてもコハクはローと瓜二つ。
今さら事実をねじ曲げられない。

(なら、それらしく嘘を吐くべきだ。)

その結果、自分がどうなろうと構わない。

(……これじゃ、母さんのことばっか、怒れないな。)

自分を犠牲にするようなやり方は、絶対に良くない。
でも、いざそんな事態に直面すると、結局は同じ行動をとってしまう。

姿形が似ていなくても、やっぱり自分たちは親子なのだ。

こんなところで、実感したくはなかったけれど。



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