第51章 選んだ果てに
一番初めに口にしたのは、誰だったか。
ああ、そうだ。
シャチとペンギンと初めて会った時。
『コイツ、船長にソックリですけど…まさか船長の隠し子ですか?』
あの時は、ふざけるなと怒鳴り散らして気にもとめなかったが、最近では鏡の中の自分を見つめ、似ているところを探している。
少し癖のある黒髪、生意気そうな目つき、無愛想な表情。
なあ、ロー。
ローがガキの頃はさ、いったいどんな顔してた……?
「そうだ…、お前……。あいつに似ている。ほら、あの──死の外科医。」
やっぱり、あんたもそう思うか。
「そんな言葉は聞き飽きた。……オレも、そう思うよ!」
準備が終わった。
愛刀を握り直し、再び海兵に斬り掛かると、彼は一瞬驚いた顔をしながらも、己の剣に手を伸ばす。
……その時。
「きゅきゅッ!」
可愛らしい鳴き声と共に、海兵の頭上からしなやかな蔓が勢いよく降ってきて、彼の身体に巻きつく。
「な…ッ、なんだこりゃ……!」
完全なる不意打ちに、海兵は為す術もなく蔓に捕らわれてしまう。
気づかないはずだ。
コハクが海兵の気を引いている時、頭上の木にヒスイが静かに移動して、この機会を窺っていたことを。
移動中に雪が落ちた時は、どうなることかと思ったが、コハクとヒスイの作戦は成功する。
「嘘をついて、だまし討ちみたいに倒すこと、かっこ悪ィと思うよ。だけど、オレにも譲れないものがあるんでね。」
「待て、お前……何者だ!」
ヒスイに宙吊りにされ、身動きがとれない海兵が問う。
その答えは、ただひとつ。
「何者でもない。オレはただの、海賊だ!」
「な、なに……ッ、ぐわぁ……!」
正々堂々闘うこともせず、コハクは海賊らしい卑怯なやり方で、海兵をバサリと斬り捨てた。