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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第51章 選んだ果てに




身体が小さなコハクは、足音も軽い。

日頃の訓練の成果もあり、驚くほど気配なく海兵に斬りかかった。

しかし……。

「うわ、なんだ……ッ!?」

白刃が届く間際、僅かな殺気から襲撃を察知した海兵が、すれすれで攻撃を躱す。

戦闘慣れした海兵は、ほとんど無意識のように反撃の刃をコハクに向ける。

「く……ッ!」

重たい一撃を刀で受け止めるが、体格差のあるコハクはそのまま吹き飛ばされてしまう。

だが、それに驚いたのはコハクだけではない。

「こ、子供……!?」

反撃した海兵もまた、襲撃犯の姿を見て目を見張っていた。

「なんでこんなところに子供が…。お前、どこから来たんだ。」

「……。」

相手が年端もない子供だと知って、海兵に油断が生まれる。

それは“絶対に負けない”と確信した、勝者の驕り。
大人の余裕だ。

体勢を整え、教えられた構えをとりながら、コハクの脳裏にはある考えがよぎっていた。

とてつもなくダサいやり方。
男として、こんなやり方をしたくはない。

だけど、そんな思いをしてでも、この海兵に勝たなければ。


「……父さんを、探してるんだ。」

「なに?」

海兵を睨みつけ、一言も口を利かなかったコハクが声を出すと、男は目を瞬いて問い返した。

「ボウズ、今なんて言った?」

「だから、父さんを探してるって言ってんだろ。この島にいるはずなんだ!」

「この島に……?」

嘘はついていない。
父となったローはこの島にいるし、コハクはローを探している。

けれど、この海兵は基地にローがいることを知らない。

「父さんに会うために、オレはここに来たんだ!」

「まあ、待てよ。お前のオヤジってのは、どういうヤツなんだ?」

ここは、海軍基地。
銀世界と化したこの島に住む人間は、全員が海兵である。

となれば、この新人海兵がコハクの父親を同僚…もしくは、上司だと推測するのも無理はない。

その心の隙に、コハクは付け込むのだ。



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