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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第51章 選んだ果てに




『……ちょ…、せん…ちょ…、聞…え……か……?』

ノイズ混じりの掠れた声。
だけどコハクには、それが誰の声かすぐにわかった。

毎日一緒にいるから、嫌でも気づく。

(……シャチ!)

緊急時のために持参していた電伝虫。
それを使って、彼はローに連絡をとっているのだ。

シャチの声を耳にして、安心と焦りが同時にコハクを襲ってくる。

仲間たちは無事だ。
そしてローも、電伝虫の受話器を取ったからこそ電波が繋がる。

少なくとも、受話器を取れる状況下にいることは間違いない。

だがまずいのは、この会話を盗聴されていること。

ヘタな情報を口にすれば、たちまち海兵に知られてしまう。

だが、情報を知りたいのはコハクも同じ。

今すぐあの電伝虫を奪いたい。
受話器に向かって、「赤犬が来るぞ!」と叫べば、それだけで危険を伝えられるのに。

『せん…ちょ…、どこ…いま……か……?』

先ほどの大爆発と黒煙のせいか、電波は未だ安定しない。

もどかしい思いをしているコハクの前で、海兵が訝しげに耳を澄ます。

「船長…? そう聞こえるな……。」

この広い海で、船の頭を勤める人間がいるのはなにも海賊だけではない。

しかし、多くの海賊たちと争ってきた彼らは、真っ先に海賊を思い浮かべるのだ。

「念のため、逆探知してみるか。」

そう言いながら、海兵は見たことのない器具を取り出し、電伝虫に装着し始める。

(逆探知……?)

聞いたことのない単語だが、まさか、電波のもとを特定できたりするのだろうか。

もしそうなら、最悪の事態だ。

仲間たちに危険を伝えることもできず、海軍側は位置を特定してしまう。

シャチたちがこの島にいることを知られたら、海軍も今この島でなにが起きているかを知るはずだ。

そうなれば、仲間たちだけでなく、海賊船も無事ではすまない。

そんなことになる前に、どうにか止めなければ。



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