第51章 選んだ果てに
千載一遇のチャンス。
失敗したら、二度と同じ手は使えない。
風にはためく“正義”のマントに触れ、ガンマナイフを発動させようとしたその時……。
「小賢しい言うとるんが、聞こえんのかい!!」
“流星火山”
サカズキの技のひとつである流星火山。
本来であれば、マグマの塊を空へ放出し、拳大のマグマを雨のように降らせる技。
しかし今回サカズキは、接近したローを撃退するため、空にマグマを飛ばすことはしなかった。
身体全体をマグマに変え、流星と化した無数のマグマを、あろうことかゼロ距離で放出させた。
「……ッ!」
喉が灼けるような熱気に、ローはすぐさま能力を使って距離をとる。
“タクト”
サークル内であったことが功を奏して、マグマの流星の方向を操り、巧みに躱す。
だが、それでも舞い散る火の粉や熱気は、確実にローを蝕んだ。
連発する能力の発動が、さらにローの体力を奪う。
「く……ッ」
なんとか間合いをとることができたが、せっかくのチャンスを無駄にし、ガンマナイフを打ち込むことができなかった。
「はぁ…、はぁ……ッ」
額から幾筋もの汗が流れ、息も上がる。
「海を汚す海賊が。その程度で、セイレーンの守人気どりでいるなど、笑わせてくれる……。」
「……黙れ。アイツのことを、口にするな。」
モモを“セイレーン”としか思えないサカズキに、吐き気がする。
そんなローの態度を見て、サカズキがフン…と鼻白んだ。
「セイレーンに手玉に取られちょる男が、いっちょ前なことを言いよる。」
「なんだと?」
モモを守ると決めたのは、ローの意思。
それを彼女に操られているかのような言い草は、余計に腹立つ。
だが、次にサカズキが口にしたことは、まったく心当たりがないことだった。
「なにも違わんわい。6年前も今も、おどれはセイレーンの都合の良いようにしか動いとらん。」
「……なに?」
……6年前?