第51章 選んだ果てに
打つ手はある。
しかし、ガンマナイフを決めるには、大きな問題があった。
ローの必殺技であるガンマナイフは、標的に直接触れる必要がある。
胸か背中に触れて、内臓を破壊する衝撃波を送るのだ。
つまり、サカズキの間合いに入り、懐に飛び込まなければならない。
なおかつ、攻撃を受けてもいけないのだ。
それがどれだけ難しいことか、サカズキと刃を交わしたことのある者ならば理解できるだろう。
大太刀を用いても、なかなか間合いに入れないのに、素手でサカズキに触れるには、無傷で済むとは思えなかった。
(腕の1本くらい、覚悟しねェとな。)
ドレスローザでの戦いで、一度は切り離された片腕。
あの時は、運良くマンシェリーとレオの能力で事なきを得たが、今回ばかりはそうもいかない。
「ちょろちょろと小賢しい。男なら、正面から挑んでこんかい!」
「……黙れ、暑苦しい。」
そんな挑発に誰が乗るか。
マグマの身体に抱きつかれて死ぬのだけは、勘弁願いたい。
“ROOM”
体力が削れることも厭わず、基地全体を覆うほどのサークルを生み出した。
“タクト”
サークル内の物体は、ローの思い通りに動かせる。
無数の瓦礫の飛礫を操って、宙に浮かす。
ぐるりと指を回すと、それを合図に瓦礫が舞い荒れ、竜巻となってサカズキを襲う。
「……こんなもん、通用するかい!」
荒れ狂う瓦礫竜巻を前に、サカズキの身体がぼこりと沸騰した。
すべてを焼き尽くすマグマ人間。
そんな男に、瓦礫ごときでダメージを与えられるとは思っていない。
だが、それでいいのだ。
サカズキの注意を引ければ、それだけで十分。
数え切れないほどの瓦礫は、サカズキの身体に付着しそうなくらい迫っている。
“シャンブルズ”
その瓦礫のひとつと、自分の身体を入れ替えた。
瞬間移動をした先は、サカズキの背後。
エネルギーを集結させた手のひらが、そっとサカズキの背中に触れた。