第51章 選んだ果てに
ロギア系の能力者は、なかなかに厄介だ。
武装色の覇気を纏えば、実体のない身体にも攻撃を当てることが可能だが、その覇気で押し負けてしまえば手だてがない。
防戦一方となり、周囲ばかりが燃えていく。
サカズキを倒したければ、覇気で上回るしかないのだ。
“ラジオナイフ”
一度切断すれば、しばらく断面がくっつかなくなる技。
ズパリと刃がサカズキの身体を切り裂くが、ロギアの身体は切断しても、切り口から新たなマグマが生まれるだけ。
「チッ、面倒な身体だ。」
煙・雷・氷。
ロギアの種類は数あれど、中でも“マグマ”というものは性質が悪い。
マグマの温度は600~1200℃。
炎と違って実体があり、冷めれば石化する。
飛び散ったマグマが炎を生み、燃え移った炎は徐々に大きさを増す。
海軍基地がどうなろうが構わないが、この分だと崩壊するだろう。
消火作業をしても無駄なため、副官はただ、ローとサカズキを眺めているだけ。
そんな副官に、サカズキは檄を飛ばす。
「なにをしちょる。早うローの一味を捕まえに行かんかい!」
「……!」
その指示に眉を寄せたのはローだ。
サカズキと副官なら、少し前の爆発音の意味を理解しているだろう。
ローが基地に潜入するために、仲間たちが陰で動いていることを。
「アイツらに手を出すんじゃねェ……!!」
先ほどは見逃した副官に、再び刃を向ける。
いくらローが甘くなったとはいえ、仲間に脅威を与える可能性がある人物を放っておくわけにはいかない。
しかし、ローの刃は目の前の強敵によって阻まれる。
「おどれの相手は、このわしじゃろうが!」
“大噴火”
サカズキの腕がぐぐっと膨張し、赤黒いマグマの正拳突きがローを襲う。
「く……ッ」
少しでも触れれば、火傷どころでは済まなくなる。
能力を使って、建物の外……上空にまで瞬間退避した。
ドゴォン……!
目標を失った正拳突きは、海軍基地の壁を焼き尽くし、おぞましいほどの業炎を上げる。
周囲に黒煙が充満し、硫黄臭さに鼻を押さえた。
しかし、建物の外に出たことが原因で、副官の姿を見失ってしまう。
気づけば、サカズキただひとりがローを見上げていた。